27 水鉄砲
車で移動中のことだった。
子供達が庭で水遊びをしているのを見かけた。
水鉄砲で撃ちあってる。すっごく涼しそうでうらやましい。
おれも、子供のころは水遊びしたっけな。
今みたいなでっかい水鉄砲じゃなかったけど。
で、お約束のように遊びの後に熱を出してたんだ。
外で遊ぶのは体が丈夫になるからって親もそんなに止めなかったし、事実、年齢が上がるほどに寝込む日にちは減っていってたな。
マーシャルアーツのジムに通うころにはすっかりアウトドアの似合う子供になってた。
「夏休みですねぇ」
ぽろりと、そんな言葉が漏れた。
「そうですね」
相槌を返してきたリカルドを見ると、予想外にも感慨深げに子供達を見ていた。
あ、もしかして、あんな子供時代がよかったなとか思ってるのか?
この人、遊ぶことを知らずに大人になったみたいだし当然のように水鉄砲なんて持ったことないだろうな。
……本物の鉄砲に関しては毎日携帯してるけどな。
それとも、結婚していたら子供達と遊んだかもしれないな、なんて考えてる?
父親になってたら、けっこう子煩悩ってか面倒見のいい父親になってた気がするんだよな。
仕事と家庭は別、みたいな感じで。
あとあれだ、反面教師ってヤツで。
自分の父親がクソだったからそうはなるまいって、な。
虐待は連鎖するともいうけど……。
おれが勝手にそんなふうに考えてたら、リカルドの表情が少し曇った。
あ、まさかまた変に自分を責めたりしてないだろうか?
ディアナと結婚できていたらあんなふうに自分の子が遊ぶのを見られたかもしれないのに、自分が至らなかったから、って。
「気を付けないといけませんね……」
リカルドがつぶやいた。
「え? 何をですか?」
「子供を使った暗殺です」
なんで今そんな思考になってんだ?
「無邪気に水鉄砲で遊んでいるなと思っていたら、実はそこに毒が仕込まれているかもしれません」
うん、なるほど?
内容にはちょっと納得したけど。子供が遊んでるの見てもそんなふうに考えちまうのかっ。
でも、これがリカルドの通常運転なのかもな。ディアナのそっくりさんを見て、ついでにおれがディアナと似たようなところを撃たれて、一時期落ち込み気味だったメンタルも回復したってことだな。
そしてそれをよしとしてるおれも、相当「裏」思考だよなぁ。
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