22 メッセージ
昨日の夜中はあれだけ痛んだ傷だけど、次の日の昼ぐらいには、じっとしている分には気にならなくなった。
このあたり、極めし者っていいよな。痛みに対する耐性を意識していれば闘気が痛みが脳に伝わるのをカットしてくれるから。
痛いってのは危険信号を伝えるものでもあるから、何でもかんでもカットすりゃいいってもんじゃない、ってリカルドは言うけどな。
今は病院だし、定期的に診てくれるんだから痛みを抑えててもいいよな。
ってことで安静にしつつ。そろそろトイレとかは自分で行かないといけない。
それ以外は飯食って、……じっとしてるだけ。
……つまらねぇ。
退院したらまた忙しいだろうから入院してるのはいいんだけど、この退屈さだけはなんとかならないかなぁ。
っと、携帯がブルってる。着信だ。
メールか。あ、リサだ。
『体調不良って、大丈夫? なにか持って行こうか?』
リサにはちょっと体調崩したって言ってる。
社長かばって腹に大怪我なんて言えるはずないし。
『いや、大丈夫。食事には困ってない』
今、アパートの部屋に行ったって誰もいないしな。
『それならいいんだけど、大事にしてね』
リサの見舞いのメッセージが胸にしみるなぁ。
なのに。
ごめんな。嘘ばっかの彼氏で。
「こらレッシュ。病室で携帯電話は使うなと言っているだろう」
いつの間にかアーシェイドのじぃちゃんが来てた。
ここの病院の先生で、もうかなりのお年じゃないかな。
リカルドの親父さんの代からのホームドクターだからな。親父さんと同じくらいの歳なら七十代に入ったくらいか?
おれも、リカルドの下についた時から世話になっている。
どうも孫みたいな感じに扱われてる。いいけどね。
「ごめんよ先生」
ここは素直に謝っておこう。
「まぁ、リカルドをかばっての怪我だからな。今回は大目に見てやろう」
先生が笑うと目じりのしわが深くなる。
「先生リカルド好きだよな」
茶化すように言ってみる。
「好き、というより、心配だ。それこそ子供のころから見てきたが、彼は、危ういからな」
あぁ、なんとなく判る。
「おまえもだぞレッシュ。おまえはリカルドと違って目に見える危うさばかりだ。あんまり無茶はするなよ」
あ、耳痛い。
けど、おれのことまで気遣ってくれる先生のメッセージは、受け取っとくよ。
「あぁ、気をつけるよ」
先生はうんうんとうなずいて病室を出ていった。
無茶するな、か。
なら、敵が襲ってこないように願うしかないな。
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