やり直し教室

完結

会社帰りに彼女の家へ向かうと、彼女が知らない男と出てくるのをみた。

大学時代から付き合ってはや5年、社会人の色々な出来事を一緒に乗り越えてきた自負はあった。

社会人になってからというもの自分の想像していた輝かしい生活はなく、ただただ毎日会社に使われ社会のはみ出しものにならないためだけに目的もなく働き続けていた。

夢もなかった。

両親や兄とも仲が良いわけではなく内気な自分には友達もいなかった。

だからこそ彼女だけが自分の心の支えであり唯一信頼できる人だった。

そんな人でさえ自分は分かっていなかったのだ。

なぜ彼女が浮気をしたのか全くわかるわけもなく、もう生きている意味がわからなくなった。

最後くらい彼女にちゃんと聞けばよかったかなと思いつつ僕は道路に身を委ね目を閉じた。

ここはどこだ？真っ白の世界。。死後の世界というものなのか？？

ふと先に、２つ教室が並んでいるのがみえた。

どちらの教室も扉は閉まっていたが、その扉には何か書かれていた。

手前の教室には、初恋の人と結ばれる教室と書かれていた。

その先にあるのが元カノとやり直す教室と書かれていた。

訳がわからないが、もう一度やり直す機会を僕に与えてくれるということなのか？？

こんな僕でも、もう一度転生させていただけるということなのだろうか。。

このかかれていることが本当ならば、普通に考えれば初恋の人と結ばれる教室を選ぶだろう。

仮に元カノの方に戻っても、またうまくいかない結果になってしまうのだから、、

ちなみに初恋の人の名前は、叶と書いて「かなえ」さんだ。

中学校の初恋の人で家が近かったり、修学旅行で同じ班だったりで好きになったが、結局最後まで気持ちを打ち明けることができなかった。。

正直そのことについて後悔は残っていて時々夢にも出てきていた。

成人式の時に一目みかけたが、相変わらず綺麗だった。。

その人と結ばれるのか〜〜

素晴らしい世界線だなと思いつつ、元カノのことを考えた。

元カノに出会ってから何気なく過ごしていた大学生活に彼女は色を付けてくれた。。

初めて行った神社デートや初めての告白。

僕が熱を出した時、何も言わずに家まできて看病してくれた。

お互い動物好きだから水族館や犬カフェデートも何度もいった。

春には桜を見に行き夏は花火を見て秋は紅葉を見て冬にはスケートに行った。

何気ない毎日が本当に楽しくて、彼女の温もりを感じることがどれだけありがたかったんだろう。。

あれ？僕は彼女のことが、まだ好きなんだ。いつのまにか気持ちは元カノ教室の方に向いていた。

浮気されたってなんだ。。僕はそれ以上に彼女から多くの物をもらっている。。

彼女が好きだ。この気持ちを伝えたい。

もう遅いかもしれない。

でも、それでも、、、

僕はその教室に飛び込んだ、、、

そこに座っていたのは、、、

京一、、きょういち、、

ふと僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。。

うっすらと意識が戻っていくなか、感じたことのある温もりを手から感じた。。

ここは病院かな、、

いつもの手だ。。横見るといつもの彼女がいた。。

この気持ちを伝えなきゃ！！

僕は、ギュッと手を握り返した。。