第5話 マクドナルド用賀IC店

最近、用賀IC交差点にあるマクドナルドが気に入っている。とくに、金曜日の夜の。


何をするわけでもなく、2階の窓際の席に座って、一般道から高速へと吸い込まれる自動車をぼーっと見ている。


金曜日の夜という、平日と休日の間。自由が口を広げている時間帯。


そこには、自由への架け橋、高速道路がある。どこにでも行けるし、なんでもできる。


自由への入り口を目の前に、加速するエンジン音にさえ、ワクワク感を感じる。


全く違う価値観の世界がそこにはある。壁を一つ隔てただけの目の前に。


これは謂わゆる現実逃避だ。それ以外の何物でもないことを、認めざるを得ない。


たとえば、空港とか、新幹線のホームとかでも、こんな気持ちにはなるのではないか。


でも、ここの高速道路の入り口は、普通の住宅街の中にあるわけで、現実と非現実のコントラストが動揺するほど強い。


全く違う時空が隣り合っていて、空気の濃さまでも違って見える。


こんな不思議な場所から、ふらっと歩けば、私の家があり、布団が敷いてある。


すぐそばには、どこへでも行ける場所があるのに、そのすぐそばで、私はどこへも行かない。


このコントラストにも、どうしようにもワクワクする。

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ストーリーなんかどうでもいい。 砧葉子 @akibamoe81

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