第2話 夢の花 ❅ ❅ ❅
蓮太郎の姿は忽然と消えた。それどころか
蓮太郎の両親も家も消えてしまった。蓮太郎の家があった場所は以前のような砂利だけの敷地になっている。
蓮太郎は何者なのか。
四月の初日。早苗の体調が急変した。救急車に運ばれて早苗は入院することになった。引っ越しは出来ないままで父だけが単身赴任になった。
璃人は早苗にずっと聞きたいことがあった。
病室でベッドの上にいる早苗は覇気がなくほとんど喋らない。璃人は今まで聞けなかったことを早苗に問いかけた。
「早苗を元気にする方法は蓮太郎が知ってるかもしれない。蓮太郎を探しているけど手がかりが無くて見つからない。僕に何か出来ることはない?」
璃人はできるだけ優しい声で言葉を重ねた。
「もし万が一に蓮太郎に会ったら、早苗は何か伝えたいことがある? 機会があれば言っておくよ」
璃人がそう聞くと早苗は口を開いた。
「あるわ。璃人……私のフリをしてほしいの。私達は双子だから仕種を真似れば大丈夫よ。みんなに私を忘れないでもらいたいの。私は蓮太郎の一番近くにいたいの」
早苗の目はとても真剣だ。璃人は疑問があるので尋ねてみた。
「顔は似ているけど僕に胸はないよ。女装して早苗の真似をすれは大丈夫かもしれないけど、性格が違うから蓮太郎にはバレるんじゃないかな」
急に早苗がベッドから起き上がる! 凄い形相をして璃人の両肩を乱暴に掴んだ!
璃人は内心動揺したがぐっと我慢する。早苗の両目からぽろぽろと涙が流れた。早苗は興奮気味に捲し立てた。
「大丈夫よ! 私が璃人に私を教えるわ! だからお願い……私になって蓮太郎を支えてあげて? 本当ならそれは私の役目だったけど私もうすぐ死ぬわ。だからお願い……私の夢を叶えて」
必死に頼む早苗を見た璃人は頷くしか出来なかった。
璃人は早苗の夢を叶えるために早苗になる練習を始めた。
そんな中、早苗の身体は原因不明の病で死んでしまう。
早苗を忘れない。
みんなが早苗を忘れないようにしないといけない。
早苗と約束したから。
蓮太郎が早苗を忘れないように、璃人が早苗として生きること。
璃人は両親と主治医に相談して納得させた。
璃人が死んだことにした。
これからの人生を璃人は早苗として生きる。
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