雪 ❅ の 花 ❅

七海いのり

第1話 恋の花 ❅ ❅ ❅







 早苗さな璃人りとは瓜二つの双子の姉弟。四歳の時に隣に越してきた同じ歳の林蓮太郎。双子はすぐに蓮太郎れんたろうのことが好きになった。




 小学生になると早苗と蓮太郎は恋人同士になった。

 璃人は同性だから仕方ないと思った。




 冬の静けさに暖かい光が射し込む。璃人が小学三年生の三月。父の仕事の都合で早苗と璃人は遥か遠くに引っ越しすることになった。

 四月にはこの環境と蓮太郎と別れることになる。



 三月の半ば早苗と蓮太郎は二人で手を繋ぎながら学校に向かう。少し遠回りして二人は人目が少ない公園へと進む。


 蓮太郎が早苗の首筋に噛みつく。

 

 早苗の血を一口飲んだ蓮太郎は口を離す。噛み跡を消すために早苗の首筋を手で優しく撫でる。



 林蓮太郎は人の世に潜む闇の住人。蓮太郎は人間に化けた吸血鬼だった。






 早苗と璃人は同じクラスで蓮太郎は隣のクラスだ。蓮太郎が早苗を連れてやってきた。

 今日の早苗は体調が悪そうで蓮太郎に支えられていた。璃人は早苗が心配になり少し離れた席から駆け寄った。

 蓮太郎は眉間に皺を寄せて言葉を紡ぐ。


「璃人、早苗を頼む。俺は暫く学校を休むから」


「早苗の調子が悪いんだから蓮太郎が側にいてやってよ」


 逃げようとする蓮太郎の手首を掴んだ璃人は大きな声を出した。


 早苗が不安気に蓮太郎を見つめる。蓮太郎は切なそうに早苗から視線を反らしてぽつりと言った。


「多分……俺と一緒にいると早苗が体調不良になるから。早苗は引っ越すんだし俺達は別れるしかない。早苗が大事なら璃人が守ってやれよ」


「無責任なこと言うなよ! 電車で片道四時間の距離だ。早苗を悲しませるな。蓮太郎がこっちに来ればいいだろ!」


 蓮太郎と璃人の口論を聞いた早苗は泣き出す。蓮太郎は苦虫を噛み潰したような顔をして吐き捨てた。


「俺と一緒にいると早苗が不幸になる。だからもう早苗とは会わない。俺も早苗もこれ以上傷つきたくない。最善の方法だ。早苗、さよなら。今までありがとう」


 蓮太郎は背後から早苗を璃人に押しつける。早苗がふらりと倒れそうになる。璃人はしっかりと早苗を抱きしめた。


 蓮太郎はその隙に教室から出ていく。



 璃人は早苗を保健室へと運んだ。早苗は保健室のベッドにつくとすぐに深い眠りに入った。


 璃人は保健室の先生に早苗を頼んで、蓮太郎を探し始めた。


 蓮太郎は早々に学校を去っていた。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る