副作用

mayopuro

副作用

 俺は過去に飛べる。

 いや正確には飛べる『ようだ』。何せその能力を与えられたのは、ついさっきだ。

 説明するのが難しいが「死にかけた俺の前に神が現れて能力を与えてくれた」と言う他無い。

 

 神はこの能力について「人間の身体を回復する際の副作用的なもの」と、後ろめたそうにしながら諸々説明してくれた。

 しかし副作用とは、こんな良い副作用、文句を言う人間は誰もいないだろうに・・・。


 神によれば、どれだけ飛べるかはそいつの秘める力次第らしい。10年飛べる者もいるが、もっと短い者もいるんだと。

 また、過去に『戻る』のではなく『飛ぶ』という感覚で、その時代の自分はそれはそれでいるらしく、出会えば最後。瞬間、飛んだ側が消滅する。

 消滅はしたくないが、しかし今まで行ったことのない場所で試せば大丈夫だろう。そうだ、あの山がいい。

 

 俺はこれから再利用するであろう時代を大切に、1秒1秒、1歩1歩と歩みを進めた。

 山頂が見えた。誰もいない。よーし・・・!

 俺は早速過去に飛んだ。

 その瞬間、3歩後ろに自分の姿が見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

副作用 mayopuro @mayopuro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説

サムズアップ

★7 SF 完結済 1話