異世界人族保護計画:機甲騎士ZEROの旅路

Leiren Storathijs

第1話 異次元世界召喚

 とある異次元世界。Earthとはまた別の世界であり、Earthとは全くもって文明文化もまるで違う世界に彼は来た。


 全身が特殊な技術で作られた鉄製の人型機械で、顔面も鉄仮面で覆われているため、表情も分からない。

 "世界に来た"のは彼だけだが、その世界の人間らはその彼の異質さに戸惑うしか無かった。


 それは召喚の儀。

 異次元とも呼べる異界より、莫大な魔力を使って別世界の"人間"を召喚出来る魔法。

 しかしそこに現れたのは、全身黒い鉄で覆われた機甲騎士であった。


 機甲騎士とはその世界の人間らが名付けた呼び名だが、彼のような人形を作る技術は無く、として、そのイメージだけでそう名付けた。


 そして今彼がいる場所は、どこもかしこも豪華な装飾が施された王の宮殿。

 数多くの騎士が彼を囲むようにして配置されている中、その宮殿の最奥に困惑した表情で固まる『王』がいた。


 彼の召喚は、あまりにも異様で異質で異例のことに宮殿の騒めきはいつまで経っても解ける事はなかった。

 彼が口を開くまでは。


「自機の名称は、人類保護派戦闘用アンドロイドZERO。異次元世界Earthより、100年後の人類の滅亡を阻止するための方法を模索しに来た」


 騒つく宮殿に突如解き放たれた、低く無機質の男声。

 そしてその口から聞こえた複数の言葉に、その場にいた騎士や王の臣下達は首を傾げる。


 Earth、異次元世界、アンドロイド、人類。

 一部の言葉は理解できても、聞きなれない言葉が複数混ざっていたことに。

 その疑問に王が辿々しく質問する。


「じんるいほ……あんどろいど? ぜろ? それがお前の名前なのか?」


「それは、自機の開発タイプの名称を含んでいる。

 自機の名称はZERO。ゼロと呼ぶ」


「ゼロか! よし……よし分かった。あーそうだな……うむ。

 ならば……あーゼロよ。我が王国へようこそ。先に言っておくが、お前が元の世界に戻れることは保証出来ない。

 だが良く聞いて──────」


王は、その挨拶がお決まりとでも言うかのように、淡々とゼロに説明する中、ゼロはその説明を途中で遮るようにして、補足の説明を挟む。


「元の世界に戻る心配は無い。ZEROの元の世界に戻るには、異次元ワームホールを潜るだけである。

 ZEROはいつでも帰還出来る準備は出来ている」


 そう言ってゼロは宙に片手を翳すと、空間が渦巻いて湾曲したようなワームホールを空中に生成する。

 ただその行動はゼロにとってはどうってことでも無いが、その世界の人間らはそれをみて騒然とする。


 本来ならば、莫大な魔力を使ったことで、その先10年は転移魔法は使えないと言うはずだったが、そんな転移魔法をゼロが一人で何気なく展開していることに、天才というには異次元過ぎるその行動に、周りは驚きを隠せなかった。


「そんな馬鹿な……我々は召喚に失敗したとでも言うのか……。これでは無理難題だと思われてしまえば、すぐに帰られてしまう……」


「あなた達の行動は無意味であったが、ZEROが此処にいることは有意である。

 ZEROがここに来た目的は、人類滅亡を阻止するための方法の模索。

 人類滅亡の阻止とは、人類にとって種の存続を掛ける史上最重要任務であり、それ以上でない限りは、ZEROに不可能は無い。

 よってどんな難題も遂行に値し、ZEROは学習する」


 人類種の存続を掛けた最重要任務。

 それは規模で言えば、世界を滅亡から阻止する以上のことであり、世界の全生命の絶滅を阻止することと同義であるとゼロは指すのであった。


「そ、そうか……ならここにいてくれるのだ? ならば再度説明しよう。我々が何故お前を呼んだのかを」

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