　登場作品『初恋と幽霊』『少年は歌詞に想いを綴る』ほか。

　高校生の三島啓太は、同じ軽音部の藤崎藍に片思い中。しかし藍は、そんな啓太の想いにちっとも気づく気配はない。

　ある日の放課後。部活の途中、啓太が飲み物を買って部室に戻ってくると、藍がうとうとと眠っていた。

　　　　　　　　◆◇◆◇◆◇

　藤崎────藤崎────

　こりゃ完全に寝てるな。最近、テストだの練習だので疲れてたみたいだし、少し寝かせといてやるか。

　それにしても、だからってこんな所で寝るか？　顧問の先生は滅多に来ないし、ここにいるのは、お前以外は男の俺だけなんだぞ。無防備じゃねえのか。

　なんてな。こいつは、俺のことそんな風に気にしたりしないか。

　こっちは、普段からけっこうドキドキしてるってのによ。

　ほんと、俺が変な気おこしたらどうするんだよ。

　…………はぁ。とりあえず、体冷やすといけないだろうし、上着くらい掛けといてやるか。

　────って、藤崎!?　い、いつ起きたんだよ！

　俺の声がしたから目が覚めたって？　悪い、起こしたか。

　何か言っていなかったか？　べ、別に、何でもねえよ！

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