誰か、助けて

授業の終了を告げるチャイムがなって、暁君は立ち上がった。


「紗那ちゃん、戻ろうか。服、着替えに」


コクン


私を送ってくれた。


教室に入ると、すでにみんなは着替えていて…。


さっきまで、話しかけてきた人達にも無視された。


私は、服を着替えた。


「あんたさ、樹理は南の彼氏って知ってるの?」


私は、首を横にふった。


「あんたみたいなドブスは、樹理に釣り合わないから」


南さんは、すごく綺麗な人だった。


「南、泣かせるような事したらただじゃおかねーから」


「後さ、次、樹理と喋ったらどうなるかわかってるよね?」


その笑顔に胸がざわざわした。


胸の奥が、ジンジンした。


さっきと同じだ。


私は、暁君が怖いんだ。


教室に戻った。


キーンコーンカーンコーン


授業が、始まった。


先生が、黒板を書いている間、メモが飛び交っていた。


何度目かで、私の元にメモがやってきた。


【声でないけど、大好きなんです。私は、ビッチでーす。よかったら、いつでも、誘ってね。

紗那】


自分が書いていないメモを見て固まってしまった。


暁君が、そのメモを奪った。


グシャグシャに丸めて、ポケットにしまった。


「先生」


「どうした、暁」


「山井さんが、体育で痛めた足痛いって言うから保健室行ってみてもらっていいですか?」


「ああ、かまわないよ」


私は、首を横にふった。


「ほら、湿布もらいに行かなきゃ」


そう言われて、無理やり立たされて教室を出された。


引っ張られた手を振り払った。


「なに?」


言いたいことが言えなくてもどかしい。


「何か言いたいことあんの?」


私は、首を縦にふった。


「じゃあ、言ってみろよ」


言えなくて、もどかしくて、手を握りしめる。


「ないなら、行くぞ」


また、手を掴まれた。


ないんじゃない、言えないだけだ。


私は、手を振り払った。


「だから、なに?」


私は、暁君を睨み付けた。


「怖い顔するね、怒ってんの?泣きたいの?どっち」


あんたのせいだって言えないのが辛い。


「俺の前で、泣いてみろよ」


私は、さらに睨み付けた。


「ビッチなのか?誰でもいいのか?」


私は、首を横に振った。


「嫌なら嫌って言わねーと、まじでやられんぞ」


そう言って、腕をまた引っ張られた。


何故か、空き教室に連れてこられた。


チョークを渡された。


【暁君のせいだから】


「俺以外、友達なんかいらないじゃん」


【暁君のせいで、いじめられるの】


「別にいいだろ?中学のダチなんか大人になったら繋がってねーよ」


【女子だけで着替えたりするんだよ】


「俺の前で、着替えたらいいじゃん。体育の時」


【最低】


「何で、俺だけじゃ駄目なんだよ」


【意味わかんないよ】


「俺だって、意味わかんねーんだよ」


【何言ってるの?】


「わかんねーよ。わかんねーけど。朝、山井見た時から何かほっとけないんだよ。この辺がモヤモヤしてんだよ。」


【何それ?】


「だから、わかんないって言ってんだろ?」


キーンコーンカーンコーン


授業が終わるチャイムがなった。


「給食だから、もどろっか」


お昼ご飯は、何事もなく終わった。


掃除の時間になった。


「山井さん、後、一人でできるよね?」


「よろしく」


大量の机や椅子を残されていった。


頑張って、運ぶ。


やばい、授業始まるまでに急がないと。


「紗那ちゃん、一人じゃ無理でしょ?」


暁君がやってきた。


「樹理」


「手伝って」


「いいよ」


暁君の仲いい人達が、手伝ってくれて授業開始一分前に机を並べおえれた。


南さん、率いるメンバーに睨み付けられた。


授業が終わった。


私は、帰る準備をしていた。


クラブ活動でも、見に行ってみようかな


何をするわけではないけれど、私は、前の学校からバレーを見るのが好きだった。


私は、立ち上がってクラスを出て体育館に歩き出した。




「山井さんだよね?」


見た事もない男子に笑いかけられた。


「ちょっときてくれる?」


有無も言わさず、私は、空き教室に連れ込まれた。


「結構、可愛いじゃん」


怖い


「声でないとかちょうどいいよね」


「ビッチなんでしょ?」


「めちゃくちゃ、メモ回ってきてたんだけど知ってる?」


怖いよ


ガタン…


もう、教室の端にきちゃった。


窓開けて、飛び降りるしか逃げる方法なんてないよね。


「山井さん」


「髪の毛サラサラだね」


「めっちゃ、いい匂い」


三人の男子に、近づいてこられる。


やっぱり、窓から飛ぶしかないよ。


怪我で、すむよね


ガンッ


ガンッ


「チッ、誰だよ」


「先公じゃね~の」


「めんどいから、開けようぜ」


ガラッ


ドカッ…


「はあ?暁、テメー」


「下半身でしか生きてねーよな馬鹿が、俺にさわるな」


ドカッ


ドサッ


「いてーな。あいつから、誘ったんだぞ」


「紗那ちゃんは、そんな事しねーよ」


「ふざけてんのか」


「もうやめよう、めんどいから」


「マジ、暁は無理だって」


三人の男子は、教室を出ていった。


「声出さねーと駄目だって言ったよね」


何で、かな……。


「流れんじゃん。涙」


暁君は、私を抱き締めてくれた。


「紗那ちゃん、俺の事忘れてるでしょ?」


どういう意味?


「10年前、この街にきたよね?覚えてないの?俺は、さっき、この目を見て思い出したよ。」


涙が溜まってる、私の頬を暁君が、撫でる。


キスしちゃいそうなぐらい、近くでを見つめられる。


「思い出した?」


首を横に振った。


「ちゃんと見て」


そう言われて、見つめる。



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