違う一面

立ち上がった私の腕を、暁君が掴んでいる。


何だろうか?


「体操服、ほら」


はあー。


私は、首を横にふった。


「遠慮すんなって、俺、もう一着あるからな。紗那ちゃん」


怖すぎるんですけど…。


「なになに、山井さん。樹理の体操服借りちゃう感じ?」


私は、首を横にふる


「樹理から、借りるならちゃんと着なきゃね」


なぜ?


「ほら、みんなこう言ってるだろ?行けよ。空き教室」


「場所わかんないんじゃん?村井連れて行ってやれよ」


「りょーかい」


嫌、いやいやいやいやいやいや。


何なの?何なの?


私は、村井君に女子の着替え場所に連れてこられた。


「山井さん、体操服借りれた?」


「えっ?これ、暁のじゃん」


「なんで?先生が、暁に借りろって言ったの?」


私は、首を横にふる。


「だよね。先生のところ行く?」


私は、首を横にふる。


「それで、いいの?」


コクコク、頷いた。


「王様のゆう通りだもんね」


王様?


「あいつ、イケメンでしょ?俺様、王様なの。でも、気をつけてね。あいつを好きな女子、めちゃくちゃいるから」


そう言われた。


私は、仕方なく暁君の体操服を着た。


デカイし。


「あんたさー。転校初日から、調子乗ってる?」


さっき話してくれた女の子達がいなくなって、朝叩かれた女の子率いる5人が私を囲んだ。


私は、首を横にふった。


「じゃあ、なんで樹理の体操服着てんのよ。脱げよ」


私は、首を横にふる。


「脱げっていってんだよ。わかんねーのか?」


ビリッって、音がした。


私は、首を横にふった。


「何なの?あんた」


髪の毛を引っ張られた。


ドカンって机に投げられた。


痛い…。


「早く行こ」


「うん」


何も言わない私に呆れたのか、いなくなった。


どうしよう。


胸元が、破けてる。


ブラ紐が、見えてる。


とりあえず、ここ持って行こう。


グラウンドにやってきた。


キーンコーンカーンコーン


「二人一組になって、柔軟体操するぞ」


手、離したら、ブラ紐見える。


下手したら、胸だって見えるかもしれない。


「ほら、早く。山井さん」


さっきの女の子が笑ってる。


「早くしてよ」


あっ


「やばっ」


「めっちゃ、胸見えそう」


「本当だ。紐見えてる」


「山井って、ビッチな」


バサッ


えっ?


「樹理、なにしてんの?」


「キャー、上半身裸じゃん。」


「暁、変態か」


「すみません」


先生は、自分のジャージの上を暁君に渡した。


何かを、先生に話してる。


「山井、行くぞ」


暁君に、手を引かれる。


保健室に来た。


「先生、裁縫セットあったでしょ?」


「ああ、これね」


「ちょっと借りるね。山井さん脱いで、それとかえてちょうだい」


コクン


私は、脱いで渡した。


シャッとカーテンを開けて、暁君の近くに行った。


みんなといる時とは、まるで別人だった。


「弟が居てさ、全部俺が縫ってやってるの」


器用に縫った。


「じゃあ、紗那ちゃんは、そのままで、俺はこっち着るからいこうか」


コクン


「先生、ありがとね」


「はいはい」


私は、暁君と保健室を出た。


並んで歩く。


「誰かに嫌がらせされた?」


私は、首を横にふる。


「優しいね、紗那ちゃん」


また、首を横にふる。


「何かあったらいいなよ。助けてあげるから」


ニコって笑った笑顔に、さっきと違って胸がざわざわした。


「先生、ジャージありがと」


「はいはい。」


戻ると、みんなは走り幅跳びをしていた。


「樹理、こっちこっち」


さっきの人達が近づいてきた。


「あんたさ、何なの?」


「樹理が、破れた方着てるのおかしいよね」


「喋れないとか気持ち悪い」


「みんな、あんたが嫌いだって」


「ちょっとぐらい泣けば可愛いのに」


ドンッて、ぶつかられた。


「山井、行くぞ」


先生に言われた。


走る瞬間に、足を引っかけられた。


いたっ…


「山井、保健室行った方がいいな」


足を挫いたようだった。





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