俺様のゆう通り

怖い人

私の名前は、山井紗那やまいさな15歳。


貧乏なりに幸せだったと思っていたけれど、父親が多額の借金を残し、返しても返しても返済できない母は、新しい男と5歳の弟を連れて出ていってしまった。


「とんだ疫病神、連れて帰ってきて。」


「しゃーねーだろーが、兄貴の子だからよ。まだ、義務教育だしよ」


母が、天涯孤独だった為、父の弟に引き取られた。


「おはよう、紗那ちゃん」


コクン


美鈴さんは、二つ上のお姉さんで昔からよく遊んでくれていた。


文句は言われても、酷いことをされないのは、一円の価値もないガラクタだからだと思う。


「高校入ったら、バイトして食費ぐらいいれろよ」


コクン


「はぁー。前は、お喋りだったのにな」


コクン


私は、朝御飯を食べる。


今日から、転校する学校。


本当は、行きたくない。


「じゃあ、途中まで一緒に行こうか?」


コクン


美鈴さんのお下がりの制服を着て、学校に行った。


門の所まで送ってくれた。


「頑張ってね。いじめられたらいいなさいよ」


コクン


「バイバイ」


バイバイ、私は手を振った。


学校に向かって、歩き出す。


ドンッ


いた…。


壁にぶつかった。


「わりぃ。ごめん、怪我してないか?」


首を横に振った。


「なにー。樹理が、謝ってんのにいいよもないわけ?」


怖い


「なになに、そんなやついんの?」


怖い


パシン


いたっ


「私の樹理に、謝ってもらったんだったらいいよって笑顔で言うのがあたりまえでしょ?」


「南、もういいって」


「樹理、行こう」


「美男美女カップル、朝からうらやまー。」


怖い…。


私は、突然家族がいなくなったせいで声と涙を失った。


さっきも、凄く怖かったのに声も涙も出なかった。


絵文字なら、泣き顔マークなのに…。


私は、職員室に行った。


山井紗那やまいさなさん、おはようございます。」


コクン


「声が、出ないんだって?」


コクン


「私は、担任の飯沼俊夫いいぬまとしおです。明日からは、スケッチブック持ってきてあげるね。」


コクン


「お友達とコミニュケーションとりたいでしょ?」


コクン


「じゃあ、行こうか」


コクン


飯沼先生は、私を教室に連れていく。


キーンコーンカーンコーン


「みんな、席つけよ」


「はーい」


「今日から、転校生が来ます。どうぞ」


そう言われて、私は教室に入った。


「結構、キャワちゃんじゃん」


「やー、いーね。」


「じゃあ、自己紹介するぞ。山井紗那やまいさなさんだ。席は、あかつの隣だからな」


先生が、そういうとみんなが、


「自己紹介」


「自己紹介」


とはしゃぎ出した。


「静かに、山井は、心の病気で話せないんだ。だから、自己紹介はなしだ。沢井、村井、静かにしろ」


「はあー、なにそれ」


明らかにガッカリと肩を落とした。


「あの、開いてる席な」


コクン


私は、暁君の隣の席に座った。


チラッと見たら、さっきの人だった。


怖い


あんまりジッと見て、因縁つけられるのも嫌だから見ないようにした。


「じゃあ、国語の教科書開け」


何事もなかったように、授業が始まった。


先生は、窓際の席を私にくれた。


この広い世界に、母と弟はいるのかー。


働いたらすぐに、探偵でもやとって探してもらおう。


いたっ


突然、何かが頭に当たった。


「悪い、消しゴム飛んだわ」


それそれと、指を指された。


私は、消しゴムを渡した。


どうすれば、そんなものが飛んでくるのか聞いてやりたかった。


「ありがと」


ニヤッて笑った顔が、めちゃくちゃ怖くて目を伏せた。


絶対に、この人には関わらない。


絶対に、この人には興味をもたれませんように…


絶対に、この人から私が見えませんように…


必死で、お願いをし続けた。


キンコーンカーンコーン


よかった。


授業が、終わった。


「山井さん、次、体育だから女子はこっちだけど」


体育……


「もしかして、体操服忘れた?」


コクン


「先生に言ってこようか?」


紙に、自分で行きます。と書いた。


「じゃあ、先生から場所聞いてね」


コクン


二人組の女の子は、去っていった。


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