第4話:安楽椅子探偵
『
話を聞くだけで言い当ててしまうなんて格好良いし私の憧れの探偵の姿でも有るけど、私にはまだそこまでの実力は無いし、性分として居ても立っても居られずに現場に行ってしまう。
給食の時間が終わった
今の私はさしずめ、
「ねえねえ、私も考えたんだけどさ、前髪を自分で切って失敗したんじゃない?」
「あー、パッツンになったら私も休みたいかも……」
「でも紅葉ちゃん、髪の毛をもっと伸ばしたがっていたよ? 前髪も、特に伸びている様には見えなかったけど」
……うん、これはそう。中学入学時に一度ショートにした紅葉は、『やっぱり美沙と同じくらいにしておけば良かったな』とたまに私の髪を触りながら言っていた。
そもそも、ちょっと前髪を失敗したくらいで学校を休む様な繊細な神経は、……うん、これは流石に失礼だな。ごめん、紅葉。
「じゃあさ、誰かに振られたとかじゃね? そのショックで寝込んだとか」
「ええ? この前恋バナになった時、紅葉ちゃんは『好きな男子は居ない』ってハッキリ言っていたよ?」
この言葉に、意気消沈するメンズ。元気っ子な紅葉は、男子人気も高いからなぁ。
仮に告白したとしても、振られる確率の方が低いんじゃないかな。
落ち込んでいる皆、心配してくれた事、ちゃんと紅葉に伝えておくからね。
それに、皆が振られたら休まなきゃいけないなら、取り敢えず今そこに居る
何せ、日曜日である昨日の夕方に私を近所の公園に呼び出して、振られたてのホヤホヤなのだから。
チラっと目を上げると、白壁君と目が合って何と無く気まずい。『お友達で』とは言ったんだし、聞かれて、『別に好きな男子は居ない』と答えたらその時は何か安心していたみたいだけど。
「じゃあじゃあ、急に自分を探したくなって、学校をサボったとか?」
「ええ? あの学校大好き給食大好きの紅葉ちゃんが? それは無いでしょ」
「そうだよ、それに今日はうちのクラス、紅葉ちゃんが大好きな体育が有ったし」
急に自分探しをしたくなる気持ちは分からなくも無いし、ふと思い立つものだろうから100%の否定をできる根拠は見当たらない。でも、今の紅葉の場合は、万梨阿ちゃんが言った体育に軍配が上がるだろう。
どれもピンと来ず、スマートフォンのメッセージアプリを開いてみる。
通知が無かったから分かっていたけど、返事は来ていない。でも、さっき送ったメッセージに既読は付いていた。
これで取り敢えず無事は確定したと、胸を撫で下ろす。
そのまま何と無く、画面をスライドしてみる。
……そう言えば、昨日のメッセージは白壁君に呼び出されたのを伝えたところで終わっちゃってたな。その時の紅葉の返事も、『へー』だけ。
「もしかして!」
叫んで、思わず立ち上がる。
「美沙ちゃん、分かったの?!」
「流石は名探偵!」
「次期生徒会長は決まりだなっ!」
沸き立つギャラリーを、手でたしなめる。
――って、何で生徒会長の話が出てくるのよ。
「まあまあ落ち着いて。今日学校が終わったら、紅葉の所に行って確認するから」
「えっ、ついて行って良い?」
「えーっと、ちょっと繊細な事だから、取り敢えず私だけで良いかな。万梨阿ちゃんが心配していた事は伝えておくからさ」
「うん、分かった。美沙ちゃんに任せる」
笑顔で、拳をぐっと握る万梨阿ちゃん。
私を取り囲んでいた皆も、一言ずつ私に残して思い思いの休み時間に入っていく。
羨望の眼差しが気持ちいい。
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