自分を曝け出せる友人ってなかなか出会えませんよね

前回のあらすじ

美人のお願いは断れませんでした。



★異世界にトリップしましたが、何の能力も無くて生きるだけで精一杯です!★


「ありがとうございます!

無理を言ってしまい、申し訳ございません。」


フローレンスさんは頭を下げた。

受けてしまったものはしょうがない。

拙い恋愛知識で頑張りますか。


「大丈夫ですよ。

微力ながらお手伝いします。


先ずは悪役令嬢が何かからの説明しますね。」


ここから、私の持てる知識の疲労だ。

悪役令嬢の説明をするとフローレンスさんは驚いた末に「ワタクシが悪役令嬢?」と考えていた。


もし、その性格が計算でなければ悪役令嬢ではないと思います。


その後は、私のいた世界とこちらの世界の違いの話をした。


身分制度はない事、どちらかと言うと年齢や会社での社歴のが重要視される事、魔術がない事等…


フローレンスさんは一つ一つに驚き、楽しそうに話を聞いてくれた。

そういえば、元の世界の話をあまりしたいなかったことに気づく。


課長とか好きそうだし、今度話してみようかと思う。

私が課長の事を思い出していると、フローレンス様がもじもじさせながら話しかけてきた。


「タチバナ様

タチバナ様の世界では親しい仲の方はなんと呼び合うのですか?」


「え?あー。

女性だと名前にちゃん付け、男性だと名前に君付けですかね?

後は名前を呼び捨てしたりあだ名をつけたりですかね。」


「名前やあだ名ですか?」


「私の場合ですと、マシロちゃんとかですね。

あだ名はつけにくい名前なんですが、例えばマシロのマを使ってマーちゃんとかです。


年上の方だと名前にさん付けとかですね。」


「そうなのですね。」


質問に答えるとフローレンス様はもじもじしながら俯いた。

トイレですか?

早めに行った方がいいですよ…とは言わないでおこう。たぶん違うよな。


「あ、あの。

宜しければ、ワタクシの事は名前で呼んでいただけませんか?


出来れば、ルーナちゃんと…」


「へ?」


「あ、その…今後も相談だけでなく仲良くお話とか出来ればと思いました。


異世界の話だけでなく、タチバナ様の事をもっと知りたいのです。


なので、ぜひお友達になれたらなと…」


こんな一般市民がいいのかと些か不安だが、可愛い女の子のお願いは断れないな。


「いいですよ。

ルーナちゃんと呼びますね。


よろしければ、私もマシロとお呼びください。」


私が答えると、ルーナちゃんは周りに花が咲いた様な笑顔を向けた。


「ありがとうございます!マシロさん。」


私たちのやり取りを見ていた若い執事服を着た男性が懐中時計で時間を確認すると、声をかけてきた。


「お嬢様、お時間です。」


「まあ、もうそんな時間ですの。

マシロさん、もうお開きのお時間となりました。


楽しい時間はあっという間ですね。」


ルーナちゃんは少し悲しそうな顔をして俯いた。


「次は第一皇子とのお茶会の時ですね。

また、お話しましょう。」


「そうですね。

そのお茶会までにワタクシからドレスを一着プレゼントさせて下さい。」


「え、いやいや。

悪いからいいよ。

今日来てるの着ていくから。」


「いえ、今回のお礼と謝罪の意味で受け取ってください。


ぜひ、贈りたいドレスがありますの。」


ルーナちゃんの目を見ると、譲る気はないと言う強い意志を感じた。

うん、諦めよ。


「わかった。

ありがとうございます。」


「こちらこそ、ありがとうございます!」


「お嬢様、馬車の準備ができております。」


執事服の男性がルーナちゃんに声をかけると、ルーナちゃんは「待ってください!」と言いながら、温室の奥に去っていった。


執事服の子と二人で待つことになり、大変来まづいです。


「本日はありがとうございます。」


気まずいと思い、薔薇を眺めていると執事服の男性が声をかけてきた。


「お嬢様があんなに楽しくお話ししているの久しぶりに見ました。」


「…そうなんですか?

いつもあの感じでは無いんですね。」


「次期皇后になる方があんなに素直だと問題になりますので。


いつも、礼儀作法を気にしたり貴族間の腹の探り合いに意識を集中したりしてますので。


打算なく話できるのが余程嬉しかったんでしょう。」


なるほど。

確かに次期皇后があんな感じだと騙されやすそうだもんね。


「お嬢様をよろしくお願い致します。」


「何もできないけどね。」


「会ってお話ししてくださるだけで喜びますよ。」


執事服の男性が温室の奥に目を向けるとルーナちゃんが走って戻ってきた。

手には軍手をつけ、鋏を持って現れた。


「もう少し、お待ちくださいね!」


そう言ってドレスが汚れるのを気にせず、白薔薇の所にしゃがみ込み数本の薔薇を切った。

素早く棘の処理をしたと思えば、宙に向かい声をかけはじめた。


「みなさん、よろしくお願いします。

あと、例の薔薇もお願いいたします。」


ルーナちゃんが声をかけた途端、白薔薇がキラキラと光を纏い光が消える頃には薄ら白銀に輝く薔薇になった。

その中央には先ほどまで無かった薔薇が増えていた。


色は青色だ。


「ワタクシが育てている薔薇をきれいだと言ってくださり、嬉しく思います。


マシロさんがこの二色が好きとお伺いしておりましたので、ぜひもらってください。」


ルーナちゃんは薔薇だけでなくかすみ草や他の花も交えてささっと卓上に置ける様にアレンジをしてくれた。


「いいんですか?」


「はい、ぜひ。

ワタクシ自慢の薔薇たちです!

お友達記念と言うことでもらってください。


こちらは、魔法をかけて枯れない様になっておりますので安心してください。」


「ありがとうございます。

すごく嬉しいです。」


「では、時間なので馬車に向かいましょう。

カイル様とのお茶会は2週間後です。


お城で開くので、当日マーティン様のお部屋でお待ち合わせさせてください。」


「わかりました。

よろしくお願いします。」


私たちが馬車に向かって歩き出す凄い勢いで背中に何かが張り付いてきた。


「まあ、猫さん。

置いていかないから大丈夫ですよ。」


…ヤバい色々起こりすぎてルゼルたんのこと忘れてた。

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