第4話桜井の苦悩

前回から1ヶ月ぶりの6月、喫煙同盟の4人は喫煙居酒屋に集合した。刑事の久保田、少年野球監督の山下、ライターの神谷、一級建築士の桜井の4人である。

みんな、生ビール乾杯しカツオのタタキをあてにした。

「いや~、ビールに美味しいつまみ。それとタバコ。落ち着きますな~」

と、世捨て人の様な発言をしたのは山下だった。

他のメンバーも喫煙している。今日は喫煙同盟を脱退する人間はいないだろうと、一人を除いて全員が思っていた。

「そういや、この辺りで三日前火事かあったな?放火とか言ってるけど」

と、久保田が言うと、神谷が、

「タバコの不始末って線があるぜ」

「おいっ、桜井、お前建築士だろ?何か知らねぇーか?」と、山下が尋ねた。

桜井は喫煙はするが、顔色が悪い。

「その、家の建築設計はオレの会社なんだ……。あの日、職人が全員引き上げたあとも、オレは現場で仕事をしていたんだ。そして、最後のタバコを1本吸って灰皿に入れたんだ。だけど、どういう訳か灰皿がひっくり返し、カンナくずに火が燃え移り、全焼したんだ。僕は、これから警察と消防に行ってくる。みんな、今までありがとう」

そういうと、桜井はテーブルに三千円置いて、店を出て行った。

残された3人はしばらく、沈黙した。

「これで、3人目だね」

と、久保田が言った。

「オレたちには、関係ない話しだ!気にすんな」と、神谷は努めて明るく振る舞った。


翌日の新聞にでかでかと、一級建築士の火の不始末で火事を起こした事が載っていた。

そして、桜井は書類送検され、建築事務所は倒産した。

その後、桜井は発狂し閉鎖病棟に入院していると、3人の耳に入る。


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