死神
死神
お風呂で手首を切って、自殺することにした。でも、彼氏に止められるのは面倒だ。だから、玄関に硫化水素を発生させた。これでお風呂まで入っては来れないだろう。私は、お気に入りの白いワンピースを着て、湯船に浸かった。そして、カッターで手首を切った。透明だったお湯がだんだんと赤く染まっていく。ああ、これでやっと死ねる。そう思っていると、彼氏が突然、お風呂に入って来た。
「奈々!!」
「あれ、ゆうくん。なんでここにいるの?」
「奈々のことが心配だったから……」
「でも私、玄関には硫化水素を発生させていたと思うんだけど。どうやって入って来たの?」
「玄関からだよ」
「マスクもなしで?」
「うん。俺、人間じゃないんだよね。実は死神なんだ。だから、ああいうのは効かないんだよ。今まで黙っててごめんね」
「死神ってことは、私もうすぐ死ぬってこと?」
「そうだよ。奈々は来年の6月23日に死ぬ。でも、普通の死神は正確な死期は知らないんだ。死期が近い人の所に派遣されてその人が死ぬまで待つ。そして、魂を刈り取る。それが死神の仕事さ」
「じゃあ、ゆうくんはどうして私が死ぬ日を知ってるの?」
「奈々が何回も何回も自殺してもなかなか死なないからイライラしてね。上司の手帳を盗み見たんだよ。奈々はさぁ、来年の6月まで生きてたい?君が良いって言うんだったら、僕が今殺してあげてもいいよ」
「そんなことして上司に怒られないの?」
「同意があったって言えば、多分大丈夫だよ。どう?今死にたくない?」
「私は……来年の6月まで生きてたいかな」
「そっか、残念だなぁ。俺としては今死んで欲しかったのに……」
死神 @hanashiro_himeka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます