第15話 一時休戦
海賊団〝テンプテーションズ〟の女団長・ヴィルジナとの武力交渉の末、ついに彼女の力の根源でもある〝
「ふぅ……。もういいだろッ? 俺らの話を聞いてくれよ」
エルスは
「ホホホ、
「勇者さぁぁん! 大変! 大変なんッスよぉぉ!」
ヴィルジナが口を開いた
「うわッ!? 頼むから飛びつくのはやめてくれェ……! 何があったんだよ?」
「バケモノ! バケモノッス! オイラ、さっさと船に戻ろうとしたんスけど、森ん中に、見たこともないようなバケモノがウジャウジャと!」
「マーカス! てめぇ、やっぱり
フェルナンドが右手にカトラスを構えたまま、マーカスを横目に
それと時を同じくして、奥手側の通路からも、数人の男たちが
「なんじゃ、
「す、すいません! ヴィルジナさま、一大事です。あの男が現れまして……」
「しばらく会わんと伝えたはずじゃ。追い返しておくがよい」
ヴィルジナは折れた魔杖を手にしたまま、〝お手上げ〟のジェスチャをしてみせる。すると、
「ああっ!? ママンの大切な〝杖〟がっ!?」
「ええい、騒ぐでない。この程度の破損ごとき、〝霧〟で元通りになるわ」
建造物と同様に、大神殿にも認知された〝
「まッ、まぁ……。まずは落ち着こうぜ? それでマーカス、バケモノッてのは?」
「見たこともないヤツッス! 最初は〝
「ンなッ!? なんだってェ――!?」
エルスの大絶叫に、一同の視線が彼へと集中する。彼を含め、アリサとニセルも〝それ〟の正体に思い至ったのか、それぞれが反応を示している。
《まさか、
《ふっ。どうやら〝ヤツ〟が、裏で糸を引いているようだな》
《うーん。できれば〝あの人〟には、会いたくないかも》
ボルモンク
誰とは無しに、
「なぁ、ヴィルジナさん。もしかして、現れた〝男〟ッてのは――」
「そっ、そうだ! 男っ……! ヴィルジナさま! 一大事なんです!」
「落ち着けと言うとろうに。ゆっくりと申してみぃ」
エルスの言葉を
「その……。イムニカお
「なっ、なんじゃとぉぉっ!?」
ヴィルジナの叫びと同時に空間が震え、周囲の水溜りが総毛立つ。
「あのタヌキめぇェ……!
「ひっ!? ひぃぃ……! 怖いよママン! ぼくたちを怒らないでぇ……!」
治まらぬ空間の
どうやら
「ケッ! そんなタヌキ野郎に化かされちゃぁ、キツネ女もザマァねぇな」
「なんじゃとぉ!? この場で貴様を氷漬けに――」
「待った! 船長、ここは俺に任せてくれ。――なぁ、ヴィルジナさん。まずはあんたの娘さんを助け出すのが先決だ。絶対に
かつてクレオールがボルモンクに
「とにかく早く探さねェと。ボルモンク三世の居場所はわかるのか?」
「わからぬことはないが……。それを
「決まってンだろ。助けに行くんだよッ!」
エルスの言葉に、アリサとニセル以外の全員の口から
「かっかっか! これは傑作じゃ! 今の今まで殺し合っていた相手に、今度は手を貸すじゃと? 勇者とやらは、かくも
「勇者かどうかは関係ねェ。俺らは最初から〝戦い〟に来たワケじゃねェんだ。急がねェと、娘さんが――
家族を失う苦しみは、エルス自身も痛いほどに理解している。彼の鬼気迫るような
「たしかに
「ただし……! これは〝一時休戦〟じゃ。一時的に手を組むだけにすぎぬ」
「ああッ! それで充分だ!……船長、みんな、
「構いませんぜ。エルスさんに従うよう、ウチの
フェルナンドは
「みんな、ありがとなッ! それじゃ、ヴィルジナさ――」
「うひぃ!? 勇者さん、来たッス! そこっ、バケモノどもが追ってきたッス!」
マーカスから
「やはり〝
「わかった……! 頼んだぜ!」
ニセルたちに
「敵襲じゃ! 手すきの者は迎撃へ出よ! そこにおる漁猟団どもには手を出すでないぞ! この
太い
それに
「わっ、すごい人数。この人たちって、もしかして……」
「小娘よ、さぞ
ヴィルジナからの
「イエス・マム! うおぉぉぉ!
「突撃ィ――ッ! ヴィルジナさまの愛を勝ち取るぞぉぉ!」
「ママン大好きっ! ぼく頑張ってくるからね!」
人波は
「どんだけ
「同じ寝室なんだって。わたしたちも一緒だね?」
「へッ……? ああ、そうだな。……んんッ?」
「ホホホ! 〝英雄、色を好む〟と言うが、さすがは〝勇者〟といったところかぇ? ほれ、あの〝裏口〟を抜ければ、すぐ
前方に見える
「よぉしッ! みんなが頑張ってくれてるうちに、俺たちも突撃だ――ッ!」
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