第10話 勇者のパーティ
エルスたちがランベルトスへ入った頃――。
勇者ロイマンの
「ヒュー、ずいぶん高いトコまで来たもんだナ。『神とナントカは高いトコに住みたがる』っていうガ、俺っちも神になった気分ダゼ!」
「あはは! どっちかって言うと〝ナントカ〟の方じゃないの? ゲルセイル!――ほら、さっさと歩く歩く! ボスと姉さんに置いてかれちゃうよ!」
岩に足を載せ、気取ったポーズを決める青年に対し、少女が
「んだとォ? アイエルよォ、俺っちはわざわざ、ひ弱なテメェに合わせてやってんダヨ。感激して
「へぇー。
風になびく黒髪をかき分け、アイエルと呼ばれた少女が
「チッ、るせェ! 景色なんか眺めてねぇで歩けヨナ!――オイ、新入りダークエルフ! テメェもバテちまったんじゃねぇだろうナ?」
じゃれ合う二人の後ろで、黒い
「オイオイ、そう
「ゲルっちが先輩ぶって名前で呼んだげないからじゃ?――ねっ、ラァテル!」
「ふん。心配は無用だ。
そう言うなり、ラァテルの姿は二人の目の前から消え――
次の瞬間には、前方を行く〝ボス〟の付近へと出現した!
「ふぇぇ……。何あれ、すごっ! ワープ? 瞬間移動? あっ、もしかして
「知らネ。
「ひゃー、カッコイイね! ラァテルってなんか、クールでロックな感じ! チャラいゲルっちにも見習って欲しいね!」
「俺っちはアイエルの言葉が意味不明ダヨ。そっちをナントカして欲しいナ!」
「あははー、ごめんねぇ。ほら、文化の違いってヤツ? それより急ご! こんな所で霧に捕まったら、落とされちゃうし!」
「おうヨ。ボスも
二人の視線の先では、勇者ロイマンが
ロイマンの
「あら、ラァテル。どう? 彼らとも仲良くできそ?」
「ああ。問題ない」
「そう、良かった。そろそろ〝霧〟が出るわ。食事にしましょうか」
彼女――ハツネは、天上の
まだ
「ウッス、ボス。
「ボス、遅くなってごめんねぇ。ゲルっちがモタモタしてるからさ!」
「揃ったか。向こうに岩ジカが居る、何匹か
「んアッ?――ほら、ラァテルのヤツが呼んでやがるシ、『ダンナ』より
「うんうん! なんか『リーダー』ってよりボスって感じだもん!」
「そうね。これからも
「フッ、解った解った――。好きにしろ」
ロイマンは大きな革袋の中から金属製のビンを取り出し、中の液体を
そして仲間たちもそれぞれに、キャンプの準備に取り掛かりはじめた――。
「ドリャアァ! ウリェイィ!」
背中に背負っていた大型剣を抜き、ゲルセイルは手近な岩を
「――ほいよット。テーブルとイスはこんなモンでいいカ。やっぱ、力仕事といえば俺っちだヨナ!」
ゲルセイルは切り出した岩に足を載せ、アイエルの方を
彼女は岩壁の付近で、獲物の岩ジカを狙っていた。
「いたいた! いいなぁ、こういうの! ザ・サバイバルって感じ!」
アイエルは嬉しそうに言い、冒険バッグから小型の弓を取り出す。
腰に剣を差してはいるが、狩猟にはこちらが有利と判断したようだ。
「悪いけどお肉になってね!――それっ!」
狙いを定め、矢を放つ!――だが、放たれた矢は岩ジカの全身を覆う岩の鱗によって、あっさりと弾かれてしまった!
「あっ、あれっ? うー、これじゃ駄目かぁ……」
警戒心が無いのか、自らの防御に自信があるのか。
攻撃を受けた獲物は、何事も無かったかのように草を
「もうっ! こうなったら本気でやっちゃうから――!」
――アイエルは弓に手をかざし、小さく呪文を唱える!
「レイヴィスト――!」
旋風を
「どうだっ! 必殺・トルネードアロー!……なんてねっ!」
「オイ、アイエル! 相手は魔物じゃねぇんダ、食える
「あっ、ごめーん!――っていうか、見てるんなら手伝ってよね!」
「チッ、しゃあねぇナ! そんなに俺っちが必要なら手伝ってやるヨ!」
「うんっ、必要必要! その馬鹿力
二人が狩りに
その時――彼らを頭上を突如として、黒く巨大な影が覆った――!
「むっ、コイツは……! 二人とも、すぐに下がれ!」
異変を察知し、ロイマンが素早く二人の元へと駆けつける!
彼の手には魔王の剣・魔剣ヴェルブレイズが握られている!
「承知した」
ボスの指示に従い、二人はロイマンの後方へ回る。
頭上では、鱗と巨大な翼を持った大型の生物が、三人を
「これは……。ワイバーンかしら?」
「いや、飛びトカゲだ。魔物じゃねぇが、下手な連中より手強いぞ?」
「問題ない」
――ラァテルは上空に手をかざし、気を放つ!
「ハァァ……!
ラァテルの
「フン!――ヴェルブレイズよ!」
主の声に応え、魔剣に
「
魔剣の一撃によって頭を斬り飛ばされ――
空からの襲撃者は断末魔を上げることも無く、巨大な食料と化した!
「ボス! 大丈夫ですかイ?」
「うわっ!――何これ? ドラゴン!?」
「いや、ただのトカゲだ。フッ、
――ロイマンは言いながら、
「げっ!? これ食べちゃうの……?」
「オゥ、スゲェ
「ああ、いいだろう」
盛り上がる男連中に対し、アイエルだけは
そんな彼女の肩に、ハツネはそっと手を置いた。
「大丈夫よ。こう見えて美味しいんだから。宮廷での
「えっ、本当に!? じゃあ食べる食べる!――ちょっと二人とも! あたしに一番美味しいとこ頂戴よね!」
アイエルも加わり、
そんな彼らを見つめるハツネの元へ、ロイマンが近寄ってゆく――。
「お前、初めて
「ふふっ、そうよ。でも、私たちが巻き込まれた〝嘘〟に比べれば――多少は、ね?」
「フッ、まあな」
ロイマンは鼻を鳴らし、ニヤリと口元を上げる。
やがて彼らの周囲に、白い霧が漂いはじめた。霧の中、勇者のパーティは仲良く炎を囲み、豪華な食事に
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