あらしのあと
「八本足の魔獣使いはノエル・ウィロウリヴィングに倒されたか」
六王機関のエージェント、コールドスティールは静かに状況を確認した。介入する手間は省けたがこの状況ではアレックスの確保ところではない。コールドスティールはエルフの森から背を向けて王都アヴァロニアに帰還するために移動を開始した。
「御主人様にどう説明すればいいのだろうか?」
コールドスティールの言葉は誰にも聞こえずにシャーウッドの森の空気に消えた。
◆◆◆◆◆
「アレックス様が無事でよかったです」
ノエルは安堵したようにアレックスに話しかけた。
「トリスタンがいてくれたから助かったんだよ」
「マスター……私は大したことはしてません」
トリスタンは謙虚に答えた。
「……でも、竜巻に巻き込まれてエルフのレンジャー部隊が壊滅しちゃったよ」
レンシアが悲しい表情を見せた。シャーウッドの森がどんよりとした空気になった。
「……レンシア、空から音が聞こえるの」
「音?」
そこにいた全員が空を見上げた。するとマルバスが乗騎のドラゴン、ロプロスに乗ってアレックス一行の前に着陸した。
「マルバス、召喚されたのね!」
アスタロトは目を丸くした。
「……マルバス、エルフのレンジャー部隊はどうしたの?」
「吾輩がしっかり保護したぞ」
そう言うと光の玉がふわふわと地上に到着し、エルフのレンジャー部隊が降りてきた。
「……みんな無事でよかった」
レンシアは安堵のあまり涙を流しエルフのレンジャー部隊に駆け寄った。ネーブルも涙を流していた。
「皆さん、無事でしたかぁ!」
声をする方を見るとシータとティターニアがいた。
「シャーウッドの森の脅威は去りました……あなた方のおかげです」
ティターニアの目には涙がこぼれていた。
◆◆◆◆◆
夕方、マッシュスキー家の屋敷。翌朝には王都アヴァロニアに戻る冒険者パーティはささやかな宴会を行っていた。シータが奮発したごちそうをみんなで食べて思いっきり騒いだ。そんな喧騒から離れたベランダでアレックスはぼんやりと外の景色を見ていた。
「……アレックス?」
アレックスが不意に後ろを振り向くとアーニャが立っていた。
「アーニャ、宴会はいいの?」
「アレックスが急にいなくなったから屋敷の中を探したのよ……ベランダで何ぼんやりしているの?」
「ちょっと夕方の風にあたりたくなって」
アーニャはアレックスの言葉に呆れたような表情をした。
「トリスタンがアレックスのこと心配してたわよ」
「ごめんごめん」
「まったく……宴会会場に戻るわよ」
アーニャはアレックスを引っ張り宴会会場に戻そうとした。
パーティ会場に戻ってきたアレックスをトリスタンが出迎えた。
「マスター、急にいなくなったから心配したんですよ……」
「トリスタン、心配かけてごめんね」
「……そんなことより、マスターにお客さんが来てますよ」
トリスタンは目配せをするとおずおずと双子のエルフ姉妹がアレックスに近づいてきた。
「ネーブル……レンシア」
「アレックス……3回も私たちを助けてくれてありがとう」
「いや、別に大したことはしてないよ。冒険者として当然のことをしただけ」
「……今度、ティターニア様のお許しをえたら、王都アヴァロニアに遊びに行くね。その時は私たちの案内をお願いね」
ネーブルの言葉にアレックスは静かに頷いた。
こうしてアレックスたち冒険者パーティの2回目の冒険は終わっだ。しかし、アレックスたちは次に待ち受けている冒険のことを全く知らなかった。
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