エルフの里

 アレックスとトリスタン、そして双子のエルフ姉妹は巨大グリズリーから取り出した謎の球体を手土産にエルフの里までやってきた。エルフの門番には今日は来客の多い日だと愚痴られたが双子のエルフ姉妹のとりなしで徹された。

「ここがエルフの里ですか。木々の匂いが鼻につきます」

 トリスタンはエルフの里に来た感想を率直に述べた。

「トリスタン、エルフの里に来た最初の感想がそれなのはどうなの?」

 アレックスはトリスタンの感想に苦笑いした。

「マスター、エルフの里の長であるティターニアさんのいる屋敷はあっちだそうです。アーニャ様が待ちくたびれていますので急ぎましょう」

 トリスタンに急かされ、ティターニアの屋敷に走って向かうアレックスたちだった。

 その姿をマスコット状態のアスタロトとレラジェはクスクス笑いながら見ていた。


◆◆◆◆◆


 ティターニアの住居はエルフの里で巨大な大木の上に存在した。なんでもこの大木は巨大な魔力が蓄えられているらしい。

 アレックスは厳かな雰囲気に思わず息を呑んだ。

「あっ、アレックスさんが戻ってきましたぁ!早くこっちに来てくださいぃ!ティターニア様がお待ちかねですよぉ!」

 シータののんきそうな声で手を振った。トリスタンも負けじとシータに手を振った。

「トリスタン、早くティターニアの屋敷に向かおう」

 アレックスはトリスタンを急かした。トリスタンはアレックスに従いティターニアの屋敷に入った。ネーブルとレンシアはお留守番だ。


 ティターニアの屋敷は木々のにおいが漂うエルフ特有の屋敷だった。

 屋敷に入ると先に到着していたノエルとアーニャが出迎えてくれた。

「あの痕跡のゆくえはどうだったのですか?」

 ノエルは調査の結果は尋ねてきた。

「巨大なグリズリーがいたよ……そして解体したらこんなものが入っていたよ」

 アレックスは魔力が込められた球体を見せた。ノエルは訝しげな視線を見せた。

「これはなんでしょうか……禍々しい気配を感じます」

 するとティターニアの従者がやってきて謁見の準備が出来たと言った。冒険者パーティは謁見の間に入室した。


 謁見室のラタンで出来た玉座にはエルフの女王であるティターニアがしめやかに座っていた。その様子はまるで冒険者が来ることを待っていたようだ。

「あなたがアヴァロニアからやってきた冒険者ですね……話はシータから聞いております」

 ティターニアは気品ある口調で冒険者を歓迎した。

「ティターニア様……今回はエルフの宮廷にお招きいただきありがとうございます。先程、巨大なグリズリーを解体したところこのようなものが見つかりました」

 アレックスはティターニアに例の魔法球を見せた。ティターニアの表情が変わった。

「……ティターニア様、どうかしたのですか?」

「実は早朝にアヴァロニアからの密使がやってきてこれを渡したのです」

 突然のことに驚く冒険者パーティ!

「それでどうしたのですか?」

「密使はわたくしにこう告げました……シャーウッドの森の野生生物の凶暴化には八本足が関わっていると」

「あの八本足が!」

 冒険者パーティは衝撃の事実に言葉を失うのであった。

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