シャーウッドの森の怪2

 双子のエルフ姉妹、ネーブルとレンシアはお互いの顔を見合わせ灰色の髪の女魔王の行動に首を傾げていた。突如現れ巨大グリズリーの眉間を射抜いた女魔王が獲物を解体するためナタを欲したのだ。

「ネーブル、どうしようか? あの魔王にナタを貸してもいいのかな?」

「……でもあんなに巨大なグリズリー、ウチの里まで運べないと思うの。それに貸さないと魔王に何をされるかわからないよ」

「あの魔王を信じてもいいのかな?」

 双子エルフ姉妹が思案顔になっていると遠くから足音が近づいてきた。レンシアは弓を構えて警戒態勢に入る。程なくしてアレックスとトリスタンの姿が森の奥から現れた。

「マスター! すごく大きなグリズリーの死体です! こんなに大きいグリズリー始めてみました!」

「こいつがあの倒木の犯人なのかな……とりあえず調査しないとわからないか」

 トリスタンとアレックスは口々にグリズリーの死体の感想を言った。

 そこにレンシアが大型グリズリーの視線を遮るように立ちはだかった!

「お前たち何者だ……見たところシャーウッドの村民ではないようだが……」

 レンシアはジト目で不審な冒険者二人組を睨みつけた!

「エルフのレンジャーさん、そんなに睨まないでよ。僕たちはキノコ研究家のシータさんに依頼されて森の調査をしているしがない冒険者だよ」

 その言葉を聞いてネーブルは驚いた。

「えっ、シータ先生の依頼で調査に来た冒険者なの!? ちょっとレンシア、シータ先生の依頼で来た冒険者に弓を向けるなんて失礼だよ!」

「でも、ネーブル……本当にシータ先生が依頼した冒険者なの?」

 レンシアは警戒態勢を解いてない。

 するとふよふよと赤い髪の強力な魔力を持つフェアリーサイズの女魔王アスタロトが遅れてやってきた!

「もう、レラジェったら急に走り出すのはやめてほしいんだから」

 その言葉にレラジェと冒険者の関係を悟ったレンシアはおずおずと弓をおろした。

「なるほど、この魔王はサモナーである冒険者の使い魔なのか……命の恩人に弓を構えるという無礼をお詫びするね」

 レンシアは恐縮しきりに頭を下げた。

「誤解が解けてよかった」

 アレックスは胸をなでおろした。

「マスター……このグリズリーの死体はどうしますか? エルフの里には運べないと思うので解体したいです」

 レラジェはマスターであるアレックスに解体の許可を求めた。

 アレックスは大きめのダガーナイフを召喚し、レラジェに渡した。うけとったレラジェはダガーナイフでグリズリーを解体し始めた。

 

「レラジェがグリズリーを解体している間に自己紹介でもしようか。僕の名前はアレックス……冒険者だ。こっちはトリスタンとアスタロトだ」

「マスターに使えるオートマトン、トリスタンです。双子のエルフさんよろしくお願いしますね」

 トリスタンは清楚っぽくお辞儀をした。しかし、双子のエルフ姉妹は目をキョトンと丸くしていた。

「ネ、ネーブルどうしよう! ボクたち双子姉妹だとばれているよ!」

 レンシアはネーブルと顔を見合わせ狼狽した様子を見せた!

「……私、何かやっちゃいましたでしょうか? 私はただネーブル様とレンシア様の魔力パターンが類似しているので双子かなと思ったのですが……」

 トリスタンは首を傾げてみた。エルフの双子姉妹は苦笑いした。

「改めて自己紹介するね……ボクの名前はレンシア、こっちは双子の妹でネーブル。冒険者さんよろしくね」

「こんにちは、私はネーブル……シャーウッドの村の外から来た人間は初めて見たからちょっと驚いているの……冒険者のことをもっと知りたいな」

 自己紹介を終えたエルフ姉妹とアレックスとトリスタンは軽い握手をした。


 その側ではレラジェがグリズリーの解体を行っていた。グリズリーの肉を細かく切り分け運搬しやすいようにする。その動きは迷いもなくベテランの狩人のそれであった。

 解体を進める中、レラジェのダガーナイフが何か硬い物質のようなものに当たった。

「……?」

 レラジェは意を決して硬い物質のようなものをグリズリーの肉から取り出してみた。その硬い物質の正体は球体状をしていて僅かに魔力の鼓動を漢字ていた。レラジェは小首を傾げてみた。

「……マスター、奇妙な球体がグリズリーの体内から見つかりました。自然のものではありえないです」

 レラジェは簡潔にアレックスに報告をした。

 エルフの双子姉妹とアレックスとトリスタンは顔を見合わせた。

「とりあえずシャーウッドの森の怪の謎に一歩近づいたのかな?」

 アレックスはつぶやいた。

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