ティターニアを求めて
翌日の朝、シャーウッドの村は青空が広がっていた。傍目では危険な野生生物が徘徊するような森が近くにあるような村には見えない。
アレックスたちはしっかりと装備を調えでシャーウッドの森へ調査に臨んでいた。
「ノエル、まずはエルフの里に向かうんだったよね?」
「そうです。シータさん、エルフの里への道案内をよろしくお願いします」
「かしこまりましたぁ」
(シータさんの道案内はちょっと心配よねぇ)
調査への期待と不安が入り混じりながら冒険者パーティ一行はシャーウッドの森に足を踏み入れた。
◆◆◆◆◆
「ヴィクトリアスといた時期とまるっきり違う! 獣の声が遠くから響く!」
アスタロトはヴィクトリアス時代からの変化に驚いていた。
「アスタロト……声をあまり出さないでください。獣に気づかれたら面倒です」
ノエルはアスタロトに呆れながら周囲を警戒する。シャーウッドの森の中でいつ獣に襲われてもおかしくないからだ。
「だってこれだけ環境が変わってるんだもん……それは驚くよ」
アスタロトは頬を膨らませた。
「アスタロト……拗ねないの」
アレックス一行は警戒しつつもどこか和やかな調子で森の奥へ歩んでいった。
「もう少しでエルフの里ですぅ……こんなところに倒木がありますねぇ」
シータの先導でエルフの里の近くまでやってきた冒険者パーティの眼の前に現れたのは大きな獣に叩き折られたと思われた倒木だった。その断面には生々しい爪痕が残されており、比較的最近にこの大木が獣におられたことを感じ取れた。
「マスター、この断面から僅かな魔力反応を感知しました」
トリスタンは折れた大木から魔力反応を感知した。冒険者パーティの顔色が変わった。
「アレックス様とトリスタンはこの倒木の後を追ってください……私とアーニャはシータ様と先にエルフの里に入ります」
ノエルは冷静に二手に分かれることを提案した。流石は傭兵の冷静な判断力といったところだろうか。
「ノエルとアーニャでシータさんをボディガードできる?」
アレックスは心配そうな声でアーニャとノエルを見つめた。
「大丈夫! シータさんはアタシたちが護るから大船に乗ったつもりで行きなさい!」
「アーニャがそこまで言うなら仕方ないな」
アレックスはアーニャの自信満々な態度を見て受け入れる以外にはなかった。
「アレックスさん、トリスタンさん。申し訳ありませんが先にエルフの里に行ってきますぅ」
シータが申し訳な下げな表情で見るとエルフの里に向かって歩いていってしまった。
「マスター、これで3人きりだね」
アスタロトは冗談めいた口調で言った。どうやらアレックスをからかうつもりだったらしい。しかし、アレックスは獣の後を追跡する方法を考えていた。
「木の爪痕に魔力反応があるのはおかしいよね……それなら、六王の腕輪の出番だ」
アレックスは六王の腕輪の円盤を回転させ緑の部分で止めた。
魔法陣が展開し、そこから人影が現れた。それは彼方の地より降臨した偉大なアヴァロニアの魔王だ!
その姿は灰色の髪をした女狩人だった。アレックスは思わず息を呑んだ。
「……彼方の地から三賢者の盟約によって召喚されし魔王レラジェ。マスター、命令をどうぞ」
その女魔王、レラジェは無表情気味にアレックスを見た。なんて鋭い視線なのだろう。
「えーと、レラジェ、早速なんだけどこの大木を折った獣を追ってほしい」
「……了解した」
レラジェは静かに大木の断面を見つめるとすべてを理解したかのように進みだした。アレックスとトリスタンはその後を追った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます