シャーウッドの村に到着
――シャーウッドの村。
偉大なる英雄王ヴィクトリアス・ペンドラゴンの幼少期を過ごしたシャーウッドの森付近にある小さな村に武装馬車が到着したのは夕方近くだった。
「ここがシャーウッドの村か。驚くほど何もない」
絵に描いたような田舎町にアレックスは思わず苦笑いした
「今日はもう遅いから私の家に泊まっていきましょうねぇ」
シータの案内で冒険者パーティ一行はシータの家に向かって歩き出した。その様子をシャーウッドの村民が遠巻きに見つめていた。よそから来た冒険者が珍しいのだろう。
シータの家は村外れの森の入口付近にあったこじんまりとした屋敷だった。屋敷の前には『マッシュスキーキノコ研究所』と看板が掲げていた。
「何もない屋敷ですがゆっくりしていてくださいねぇ……」
シータがホストとして冒険者パーティを歓待するためにお茶を持ってきて現れた。
「マスター、見てください!キノコです! キノコがいっぱいです!」
トリスタンが屋敷に飾られたキノコにはしゃいでいた。
「すごい……本当にキノコ研究家なんだ」
アレックスはキノコまみれの環境に驚いた。
「えっへん!」
シータが胸を張った。思わず冒険者パーティは微笑んだ。
◆◆◆◆◆
その頃、シャーウッドの村の小さな教会では黒ローブ姿のダークエルフ、コールドスティールが佇んでいた。深夜に王都アヴァロニアから出発して、昼頃にシャーウッドにたどり着いたコールドスティールは変身魔法でカラスに変化してシャーウッドの村を偵察しながら武装馬車の到着を待っていたのだ。
年老いた神官が恭しくコールドスティールに跪いた。
「魔術師ギルドの魔術師様、こんな辺鄙な田舎村にやってきてありがたいです」
「魔術師ギルドとして当然のことをしただけ……神官、シャーウッドの森の地図がほしい」
それを聞いた老神官は訝しい表情をした。
「地図ですか? 実はシャーウッドの森に住むエルフが地図情報を独占していて、私めではどうにもならないのです。マッシュスキー家の者ならある程度、森の中の土地勘があると思うのですが」
「……わかった」
コールドスティールは残念そうな表情をした。
◆◆◆◆◆
真夜中、マッシュスキー屋敷。冒険者パーティは屋敷の空き部屋を寝床として使っていた。
「マスター、明日からシャーウッドの森の探索だね」
アスタロトはアレックスに向けて歯を出して笑った。その姿をみて同室のトリスタンは熟考していた。アスタロトとトリスタンのアレックスの呼び方が被っているのだ!かといってアレックス様呼びはノエルと被る! トリスタンは静かに悩んでいた。
「トリスタン、どうしたの……なにか悩んでいるような表情だけど」
トリスタンの表情の変化にに気付いたアレックスはトに声をかけてみた。
「……マスター、気にしないでください。少し表情筋の運動をしていただけです」
トリスタンは誤魔化した。
「……わかった。でも気になることがあったら、なんでも僕に言ってよ」
「そうだよ……トリスタンにはマスターだけじゃなくお姉ちゃんもついているんだから!」
その言葉を聞いたトリスタンは思わず微笑んだ。
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