冒険者と傭兵とキノコ研究家!

 いよいよシャーウッドの森に向かう朝がやってきた。賢者の鉄槌の前には頑丈な武装馬車がアレックスたちを迎えるために準備されていた。

 この武装馬車は今回の依頼のためにカーライルが用意したものだ。アレックスたちが安全にシャーウッドの森の道のりを進めるようにという配慮だった。

「こ、これが武装馬車……初めて見るけど物凄い威容ね」

 アーニャは目の前に見る武装馬車の迫力に目を白黒させていた。

「アヴァロニア人の技術もここまで来たんだね……ヴィクトリアスの時代には武装馬車なんてものはなかったよ」

 アスタロトは武装馬車を見てしみじみとアヴァロニア黎明期を思い出していた。

「マスター、この武装馬車は頑丈そうですよ。分析してみた結果、エレファントの正面突撃にも耐えうる作りになっています!」

「トリスタン、初めての長旅で浮かれているの?」

 トリスタンはオートマトン特有の無表情だが喜々として分析結果をアレックスに話すあたり、初めての長旅へのワクワクが止まらないようだ。


 そんな冒険者チームを一歩引いた視線でノエルは見つめていた。

 ノエルは幼少期より剣術を傭兵の両親に叩き込まれ戦場に身を置いていた。14歳のときに両親の死によってウィロウリヴィング傭兵団が解散してからもノエルはフリーの傭兵として各地の戦場を渡り歩いてきた。当時のエディンバラの魔術王は拡張志向が強く戦う場所には困らなかった。

 しかし、今から7年前にエディンバラ王国が政変で倒れ北方連邦が建国してからは、傭兵稼業は縮小傾向にあった。中にはトレジャーハントという名目で傭兵団が冒険者パーティに鞍替えするケースもあった。それでもノエルは傭兵稼業にこだわりたかった。だからこそノエルは海を渡りエリンに向かい、アレックスに出会ったのだ。


◆◆◆◆◆


「ノ、ノエルさん……何か考え事ですかぁ?」

 シータがノエルに突然声をかけてきた。

「えぇ、少し過去に思いを馳せていました」

 シータはノエルに気さくに話しかけてもらって闇深した。シャーウッドの森でキノコ研究に明け暮れる日々を送っているシータにとって傭兵はかなり遠い世界の存在だった。

「しかし、ノエルさんが冒険者パーティの警護に来てくれるなんて大船にのった気分ですよぉ!」

 シータはノエルの実力に期待していた。

「……シータさん、確かに私は傭兵として死線を何度も潜り抜けてきました。だけど私もいつでも駆けつけられるわけではありません。最後には自分で耳聞を身を守らなければなりません」

「……手厳しいですぅ」


冒険者と傭兵とキノコ研究家、それぞれの思いを胸を秘めて武装馬車はシャーウッドに対っていく。その先にどんな冒険が待っているだろうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る