シャーウッドの森編

シャーウッドの森の怪


 深緑の中に悠久の歴史が眠るシャーウッドの森。だが、シャーウッドの森に異変が起きていた!


「ネーブル、 逃げて!アイツには精霊術は通用しない!」

 髪の長いエルフが相方のエルフに逃げるべく通告した!

「で、でも……わたしたちが逃げたら、他のエルフが危険になっちゃうよ!」

「アイツは自然な野生生物じゃない……ボクのレンジャーの勘が告げている! できるだけアイツをエルフの里から遠ざけるんだ!」

「……レンシア?」

 エルフのドルイド、ネーブルは髪の長いエルフのレンジャー、レンシアの悲壮な覚悟を秘めた瞳を見た。

「やっぱりダメ! 二人で一緒に生き残るの! リーフスラッシャー!」

 ネーブルは叫び、木属性の遠距離攻撃を『外敵』に向けて放った!超自然の葉っぱが『外敵』に襲いかかる!

「……GRRR」

 並の野生生物だったらこの精霊術を喰らったらひとたまりもなかっただろう。しかし、『外敵』は違った。通常個体より明らかに大きい、中型のドラゴン級の体格をしたグリズリーはネーブルの決死の覚悟の精霊術をほぼノーダメージで受け止めると地の底から響き渡るような唸り声を上げた!

 そして、グリズリーの視線はネーブルに向けられた。ヘイトがネーブルに向いたのだ。レンシアは急いで弓をグリズリーに向けて構え連続速射する!グリズリーのヘイトをネーブルからレンシアにそらすためだ!しかし、エルフの本気の連続速射をグリズリーはものともしなかった! ジリジリとネーブルに迫りくるグリズリー!

「ネーブル!」

 レンシアはネーブルの名を叫んだ!


「……スナイプショット」


 その時、どこからともなく謎の矢が飛んできて、グリズリーの眉間に矢が突き刺さった!

 グリズリーは低い唸り声を上げると絶命した!レンシアは急いでネーブルに駆け寄った!

「レンシア、今の弓の一撃を放ったのは誰なの?」

 ネーブルはレンシアに疑問に思ったことを聞いてみた。

「ネーブル、この矢はボクの矢じゃないよ」

 レンシアはそう言うと死んだグリズリーから矢を引き抜いた。その矢は全体が漆黒に染められた色をした矢だった。まるで全身魔力でコーティングされてるようだった。二人のエルフは仲良く首を傾げた。こんな矢は長く生きていたけど見たこともなかった。一体誰がこの矢を放ったとレンシアが考えたとき、エルフの優れた聴覚が足音を感知した。レンシアはとっさにナタを構え警戒した。しかし、足音が近づくと同時に強烈な魔力を感じ取った。

「レンシア……この魔力、もしかして魔王?」

「魔王がシャーウッドの森にどうして用事があるんだよ」

 二人のエルフの少女は足音と魔力の増大に困惑と恐怖を隠せないようだった。

 そして、足音と魔力の主は二人のエルフの前に姿を表した。それは、灰色の髪をしたフードつき狩人衣装をした女魔王だった。今度こそ私達は殺される。ネーブルとレンシアは直感した。しかし、狩人姿の女魔王はじっとレンシアを凝視した。

「……な、何か用ですか?」

 レンシアは震えた声で女魔王に話しかけた。

「……今からこのグリズリーを解体するからこのナタを貸してくれない?」

「……え?」

 レンシアは気の抜けたような声を発した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る