新たなる依頼!
冒険者ギルドは昼も夜も関係なく冒険者や依頼者が集まっていて騒がしい。多くの人が出入りする冒険者ギルドではトラブルが起きるのはよくあることだと冒険者は認識していた。しかし、今回のトラブルはいつもとは少し性質が違っていたようだ。
「こんなはした金でシャーウッドの森の調査なんて出来ねぇんだよ!」
「はした金と言われても……事前にティターニア様から話を通していて報酬はシャーウッドのエルフクランが責任を持って支払う約束なんですぅ」
「金と依頼の内容が釣り合わないんだよ!報酬が一桁少ないんだよ!」
冒険者の怒号に黒ローブの隠者は思わず「ひぃっ!」と情けない声を上げた。しかし冒険者の怒りは収まらなかった。
「そもそもシャーウッドのエルフクランなんて実在が疑わしい都市伝説のようなもん信じられるかよ! まさかお前、詐欺師か何かじゃないだろうな!」
「そんな……ちゃんとティターニア様の念書もあるのに信じてもらえないなんて」
黒ローブの隠者は絶望に打ちひしがれた表情をした。ギルド職員は心配そうに様子を見守っている。
「とにかくシャーウッドの森の調査なんてできない! さっさとほかのギルドに行きな!」
冒険者は黒ローブの隠者に追い払うような手のしぐさをした。
「賢者の鉄槌がアヴァロニアで一番大きい冒険者ギルドだと聞いたのに……依頼を受けてもらえないなんて、どこの冒険者ギルドに行けば受けてくれるんだろうか」
黒ローブの隠者は心が折れたような表情で愕然としていた。
しかし、黒ローブの隠者に手を差し伸べるものがいた。
「ねぇ……シャーウッドの森の調査、アタシたちが受けてもいいかしら?」
黒ローブの隠者が顔を上げるとそこにアーニャの姿がが立っていた。
「お前本気か!? シャーウッドの森は今、凶暴な獣が闊歩する危険地帯だぞ! 調査に行った冒険者パーティが何人も消息不明になっているんだぞ!」
冒険者は慌ててアーニャを制止した。アーニャの行為はまさしく火中の栗を拾う様な行為だったからだ。しかしアーニャは不敵な笑みを浮かべた!
「そんなこと知っているわ……しかし、シャーウッドの森はアヴァロニアの英雄王、ヴィクトリアス・ペンドラゴンが幼年期を過ごした聖地、凶暴な獣が闊歩する状況を見過ごすなんてアンタは腰抜けなのかしら?」
アーニャは冒険者に向けて挑発した!
「……ぐぬぬ」
冒険者はぐうの音も出ないような声を出した!完全論破である!
「えっと、飛び込みの依頼はアーニャさんのパーティが引き受けることで決まりっていうことでいいですね!?」
そこに収束するタイミングを計ったかのようにエミリアがアーニャが依頼を受託したことを賢者の鉄槌に集まっていた冒険者に宣言するかのように澄んだ声が響き渡った。
◆◆◆◆◆
アヴァロニアの街に夕日が沈むころ、ノエルは貴族屋敷の中にいた。
「アヴァロニア王国の宰相たるギネヴィア・ホークウインドが一介の傭兵である私を呼び出して何の用ですか?」
「くだらぬ謙遜はいい……腕利きの傭兵であるノエルにしか頼めない仕事がある。呼び出したのはただそれだけだ」
アヴァロニア王国宰相、ギネヴィアは余裕たっぷりの態度でノエルを見つめていた。その視線を見てノエルは傭兵の直感で真剣度が高いことを判断した。
「……依頼とはなんですか?」
ノエルの言葉にギネヴィアは少し口ごもった様子を見せた。
「六王機関を知っているか?」
「あいにく風の噂にも聞いたことはありません」
「そりゃそうだろう……六王機関の存在を把握しているのは今のところ私だけだからな」
一国の宰相しか知らない最重要機密をなぜ傭兵に漏らしたのか?ノエルは訝しんだ。
「六王機関とはアルビオン大陸に根を張ろうとしている謎の秘密結社だ。構成員や拠点の類は一切不明だが、一つだけはっきりしていることがある」
「はっきりしていることとは?」
ノエルの疑問にギネヴィアはニヤリと笑った。
「聞いて驚くなよ、ノエル・ウィロウリヴィング。六王機関は英雄王ヴィクトリア・ペンドラゴンをこのアヴァロニアの地に復活させようとしている」
ノエルは無表情を保ちながら心の中で驚愕した。
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