新パーティ結成!
アレックスはメンバー募集をしているという人物に会うため、『賢者の鉄槌』ギルド二階の一室に向かっていた。アレックスの心には期待と不安が混ざった複雑な感情でいっぱいだった。
相手はどんな人だろうか、相性はどれぐらいなのだろうか。現時点ではわからないことばかりだ。アレックスはそんなことを考えながら、事前にエミリアに教えられた部屋の扉を勇気をもって開けた。
「ん……あんたがアタシとパーティを組んでくれる人なの?」
そこには銀髪のどこか高貴な雰囲気をまとった、アレックスと同じくらいの背丈の少女が静かにギルドルームのソファに座っていた。
「初めまして、僕の名前はアレックス・オルムステッド、君がパーティを募集していると聞いてここに来たんだ」
アレックスはまず自己紹介をした。するとその少女は値踏みをするかのようにアレックスをじろじろと見た。
「ふーん、この悪趣味な腕輪、アーティファクトか何かかしら? まぁ、アタシはこれに興味はないけどね」
「実はコレ、貰い物なんだ。僕は結構気に入っているんだけどね……キミのお気に召さなかったかな?」
アレックスは慌てて六王の腕輪について弁明した。
(六王の腕輪を悪趣味だなんて……言ってくれるよね。マスター?)
そこに突然、アスタロトの念話が飛んできた。
(うわっ! 突然、アスタロトさんの声が頭に響いてくる! 何が起こっているの!?)
(マスターとあたし達は契約というリンクでつながっているの……だから六王の腕輪の外のことも把握できるんだ)
アスタロトの説明が入りアレックスは納得した。
「あんた……どうしたの? 何か気に障ることがあったかしら?」
「いや、何でもないよ」
アレックスが慌てて釈明すると少女は安心した。
「そう……ならよかったわ。アタシの名前はアンナ、アンナ・ローズウェストよ……気軽にアーニャと呼んで構わないわ」
「アーニャ、今後ともよろしく。一緒に冒険者として一山当てていこう」
アレックスはアーニャに手を差し出した。アーニャはそれに応え手を伸ばし握手した。
「アレックス……あんたとアタシは共犯者よ。二人が手を組めば冒険者としての頂にたどり着くことができるアタシは信じているわ」
かくしてアーニャとアレックスはパーティ結成する運びとなった。しかしこれからこの新米冒険者パーティは数奇な運命に巻き込まれていくことに誰も知らなかった。
◆◆◆◆◆
「聞いたか、六王の腕輪を装着している者を見かけたらしいぞ……しかも諜報員の話だと、相手は冒険者らしい」
「ホワイトアウト、その情報を総長の耳に入れたのか?」
「大丈夫だ……総長に使いを出したところだ。いよいよ再臨計画の最後のピースが揃ったんだ……総長もお喜びになるだろう」
「しかし、一つ不審な点があるとしたら、なぜ六王の腕輪が冒険者の手に渡ったかだ……これはおそらく再臨計画の不確定要素になるだろう」
「ドクター・レッドランド……何を考えているかは知らんが軽率な行動は慎め、すべては総長の判断で決まる」
「あぁ、わかってるさ。総長の号令を待ち続けるよ」
(どいつもこいつも腰が重すぎる……何かがあっては遅すぎるんだ!)
「六王機関に栄光あれ」
「六王機関に栄光あれ」
ひそかにアヴァロニア王国に潜む闇が蠢こうとしていた。
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