こちら出戻り冒険者お姉ちゃんつき現在パーティーメンバー募集中

 女魔王アスタロト召喚の翌日の朝、アスタロトとアレックスは同じベッドで目を覚ました。なぜ同じベッドに寝ることになったのか。それはアスタロトが腕輪に戻す方法を教えてくれる条件としてお姉ちゃんと一晩添い寝するという条件だったからだ。アレックスは当然条件を飲む以外に道はなくアレックスはアスタロトと添い寝することになったのだ。

「マスター、いい朝だね……あたし達の再出発の門出にふさわしい朝だよ」

「そうだね……」

(アスタロトさんの体すごく柔らかった……やはり魔王の肉体は特別なのかな?)

 ある意味正直な感想が浮かんだアレックスは頭をぶんぶん振って邪念を吹き飛ばそうとしていた。

「どうしたのかなマスター? ひょっとしてお姉ちゃんの身体の添い寝を思い出しちゃったの?」

 アスタロトにはマスターのことをお見通しだった。

「うぅ……そうです。アスタロトさんの添い寝を思い出しました」

 アレックスはたじたじになった。

「さて、冒険者ギルドに向かおうか……大丈夫だよ! お姉ちゃんがついてるから!」

「その前にアスタロトを召喚から戻す方法を教えてくれませんか?」

「そっか……忘れてたよ…腕輪についている円盤を逆回転させて色の位置に戻せばいいんだよ」

 それを聞いたアレックスは円盤を逆に回し紫の色で止めた。アスタロトの足元に魔法陣が出る。

「マスター、またね……」

 そういってアスタロトは消えていった。

「ふぅ……冒険者ギルドに行くのは気が重いなぁ」

 そう言いながらアレックスは冒険者ギルドに向かったのだ。


◆◆◆◆◆


 アヴァロニア王国冒険者ギルド『賢者の鉄槌』、ここはアヴァロニア王国で一番大きい冒険者ギルドである。アレックスは緊張した面持ちで冒険者ギルドの門をくぐろうとしていた。これから冒険者として再スタートを切るのだ。彼の腕にはマジックアイテム六王の腕輪がある。ここから冒険者としての功績を積み上げるしかない。

「エミリアさん、こんにちは……アレックスです。アレックス・オルムステッドです。冒険者パーティを募集したいんですけど」

 アレックスは冒険者ギルドの受付で冒険者パーティを募集したいことを告げた。

「アレックスくん、ちょうどいいところに来てくれたよ。実は冒険者パーティを募集している子がいるんだけど、よかったらその子の冒険者とパーティを組んでくれないかな?」

 割とすんなりと冒険者パーティのマッチングが決まりそうでアレックスは驚いた。もう少し時間がかかるものだと思っていた。

「エミリアさん……その冒険者の子とパーティを組んでもいいんですか?」

 アレックスは思わず冒険者ギルドの受付嬢、エミリアに聞き返した。

「アレックスくんと年が近いみたいだし、相性が合いそうだと思うよ、とりあえず面通ししてみる?」

「はい、お願いします……」

「アレックスくん、若いのに冒険者といういばらの道を進もうとしているから心配してるんだ……足りない部分は賢者の鉄槌がサポートするから安心して!」

 そう励ましの言葉をエミリアからもらいアレックスはまだ見ぬパーティメンバーがいるという冒険者ギルドの一室に向かうのであった。


「あれは六王の腕輪……なぜ年端のいかない少年が所有しているの?」

 そしてその陰でアレックスのことを注視する存在がいたことを誰も知らなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る