126-2

話している間も魔物は襲ってくるため一部のメンバーが魔物と対峙し続けることになった


こんな突拍子もない話をどこまで信じてくれるかは分からない

それでも話さなければならないことだけは分かる


話し終えると暫く静寂に包まれた

聞こえるのは魔物と対峙する音のみの異様な空間が広がっていた

ロキは勿論ダビア達も、同行していた他のパーティーのメンバーも何も言わない

その静寂を破ったのはフロックスだった


「つまりなんだ、次元ホールが閉じるのを嫌う神が、閉じるのに必要なオリビエのいる場所ごと滅ぼそうとしてると?」

「…」

「歌姫を召喚したことでこの世界では既に1つの国が滅んでる。それを考えれば次元ホールなんてない方がいいんじゃないか?」

ダビアに続いてマロニエがぼそりと呟いた


「召喚した者にこの世界の運命を任せること自体間違ってるんだよ」

「そうだな。元の世界にそれぞれの人生がある。それを犠牲にして国を、世界を救えなんて言う方がおかしいんだ」

「皆…」

皆の言葉に私は涙をこらえきれなかった

それを見てロキが抱きしめてくれる


「オリビエの事は絶対に守る」

「ロキ…」

「そうだぞ。そんな運命蹴散らしてやればいいんだよ」

ロキ達だけでなく周りに居たパーティーの面々も頷いていた


「ありがとぅ…」

「礼なんて必要ない。オリビエはそれだけのことをこれまでにしてくれてるんだからな」

「そういうことだ」

騎士達も当然の様に言ってくれる

それが本当に嬉しかった


『カギ、声、言葉、消す』


不意に聞こえた言葉にそれを発した魔物を思わず捕まえていた

「私の声がその命令を打ち消すってこと?」

魔物は頷いた


「私の声…」

その時私は幼い頃母に言われた言葉を思い出した


『オリビエ、あなたはいずれ巻き込まれるかもしれない。その時は今の歌を歌いなさい。あなたを巻き込んだ人と共に。あなたの声は必ず光をもたらしてくれるから』

言われた時は全く意味が分からなかった

でも母は何度もそう言い聞かせた

遺言として残すほどに

もしその言葉が今の事を指しているなら私を巻き込んだのはイモーテルだ


「ロキ、一旦出よう」

「「「は?」」」

皆が何を言っているんだと目で訴えて来る


「イモーテルの力が必要なの。多分だけど」

「…なにか思い当たる節があるってことか?」

「うん。母に言われ続けた言葉だけど…今まで全く意味が分からなかった。でも多分今の事を指してるんだと思う」

不確かながらもどこか確信をもっていた


「異世界に召喚されることを指してたってことか?」

「だとしたら普通は考えられないことだ。意味が分からなくて当然だな」

「…わかった。どうせ永遠に倒すしか手はないんだ。賭けてみるのもいいだろう」

「全員で行くわけにもいかないから俺達はこのまま魔物と対峙する。ここでお前たちの吉報を待つよ」

「お前ら…」

ここで魔物と対峙し続ける

それは休みなくここで倒し続けるということだ

私たちがどれだけの時間で戻ってこれるかもわからないのに…


「なーに、1パーティーずつ順に休憩取ってりゃ何とかなるさ」

「まかせとけ。だてに冒険者やってねぇよ」

「騎士団も冒険者に負けてられないからな」

好戦的な言葉に後を押されるように、私たちは少しでも早く戻ると約束してすぐさま行動に移した

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