105-2

「まぁ、そんな中で5年以上働いてる者はそれなりの実力があるともいえるけどな」

家族を盾に取られながら一定水準を保った仕事をこなせるということは確かにそういうことなのだろう

だからと言って長く務めたことを喜べるかと言えば否だろう


「あの、勿論入るなと言われる場所には立ち入りません。守秘義務も守ります。どうか働かせてください!」

エリーは懇願するように頭を下げる

ロキを見ると頷きが返ってきた


「顔を上げてエリー」

「…はい」

「あなたならカメリアとも上手くやってくれるだろうし、当のカメリアが推薦してくれる人だから安心だわ」

「…じゃぁ…」

「ええ。とりあえず月10万シアの契約でいいかしら?」

「10万シア…そんなに?」

エリーが目をパチパチさせている

理解が出来ずロキを見た


「一般収入の相場はカクテュスのものだ」

「なるほど?」

「ソンシティヴュの称号なしの報酬は極端に分かれる。個人で商売してたりフジェの様に王都から離れていれば10万シア弱は大抵貰える。王宮の騎士で15万シア、それ以外の騎士が13万シア、メイドたちが10万シアくらいだな」

「最初にジョン達を雇うときに聞いたのもそれが基準ってことだよね?」

「ああ。問題は王宮や称号持ちの屋敷に努めてる者だ。今言った額面は最低賃金として義務付けられてるがそこから引かれる金額がな…」

「引かれる金額?」

「騎士にしてもメイドにしても基本は住み込みだ。その家賃、食費、酷い所は衣装代まで引いてやがる」

「え?それって殆ど残らないんじゃ…」

「私は平均して3万シアでした。家賃が4万シア、食費が2万シア、衣装代で1万シア引かれてたけど2万シア分の食事なんてとてもさせてもらえなかった」

「なんて酷い…」

本当に腐った国だったってことね


「エリー、その報酬額はカクテュスでの一般的な報酬なの。だから高すぎるってわけじゃ無いから安心して」

「でも本当にこんな…私、報酬に見合うよう、精一杯働きます!」

かなりの決意が読み取れた


「期待してるわ。それと掃除する時の服装なんだけど、メイド服のようなものは用意してないの。だからエリー達が動きやすい服を3セット買ってくれる?お金はこっちで出すから」

「カメリアにもその話はしてある。2人で動きやすいものを選んでくれ」

私達には掃除しやすい服装なんてわからないし、自分たちで選んでもらった方が都合がいい

同じ仕事をするならと言うことで、カメリアにも買うことを納得してもらったのだ

そのうちお手伝いを楽しんでいる子供たちの分も買っておこうと思ってるのはまだ内緒だ


騎士団の報酬もカクテュスの他の騎士と同等になってるから2人の収入でソンシティヴュにいた時の4人分の収入くらいは軽く超えるだろうというのがロキの談

幼い子もいるから少しでも気持ちが楽になるといい

エリーと詳細を詰め、無事契約を交わすと翌日から来てもらうことになった

2人は早速、作業用の服を買いに行った

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