100.応急処置

100-1

夕食の前にジルコットとジルコットの仕事を紹介すると、カメリアが真っ先に食いついた

「じゃぁ、これからは毎日医師がいてくれるってこと?」

「そうなるね」

「それは本当にありがたいわ…子供たちが熱を出しても不在の日だとどうしようもなかったから」

小さい子どもはよく熱を出すから親は大変だったんだろうね

確かにカメリアがパニクってるのを何度か見たことがあるもの


「知り合いも安心すると思う。まだ乳児だしね」

「乳児はどれくらいいるんだろうか?」

「私が知ってるのは2人ね。1人は来月1歳になるし、もう1人はその2か月後ね」

「できるなら、早めに会わせてもらえるかな?」

「勿論よ。彼女たちも喜ぶと思うし」

詳しい話は明日にでもしましょうとカメリアはこの場は一旦打ち切った

近いうちに交流の場が持たれるだろう


「フロックスを訪ねてよかったよ」

寛ぎながらジルコットはそう言った


「ちょっと顔を見せるだけのつもりだったが、気づいたら住む場所も仕事も決まってるとは…ありがたいことだ」

「それは俺らも一緒だよな。ジルコットがここにいるなら色んな意味で安心できる」

「ダビアが言うと怪我した時の保険に聞こえるのは気のせいか?」

「残念ながら私にもそう聞こえるわ」

「俺も」

私が同意するとマロニエも乗ってきた


「お前らなぁ…」

「はは…まぁ構わんさ。なんなら騎士団でしてた応急処置の講習でもやるか?」

「それは自警団の方でも頼みたいな」

「応急処置ならギルドの講習でも重宝するんじゃない?」

「今は戦い方と守り方だけだったな」

ロキの言葉に頷いて返す


「ギルドの講習に自警団とは一体…?」

「自警団はカクテュスの領土になる前に作った組織なの。当時はまだ騎士団がなくて、それでも町を守りたいという人たちの集まりね」

「あぁ、僻地でよくあるやつか。確か有志の集まりとか」

「それ。今は騎士団がちゃんとあるけど、有事の際に避難を先導する位置づけで存続してるのよね」

「おかげでナルシスたちが攻めてきたときも、騎士団の殆どがその対応に集中できた」

「うまくすみわけがされてるということか…」

ジルコットが感心したように頷いた


「騎士団の中にも自警団に顔を出してくれる奴が多くて助かってる。それがあるからすみわけもスムーズに進んだしな」

「中々面白そうな集まりだな。それに協力し合えるのは素晴らしいことだ。私で役に立つなら参加させてもらおう。で、ギルドの方は?」

ジルコットは驚くほどサラッと結論を告げて次を促した


「この町は貧しい家やスタンピードで稼ぎ頭を失った家が多いんだ。そういう家は子供が狩りに出たりする」

「あぁ、なるほど。そのための戦い方の講習か」

「そういうことだ。目的は無駄死にしないための基本的な戦い方と守り方、あとは解体や薬草に関することも教えてるな。成人してない子どもは、その講習で合格を貰ってからしかギルドに登録させてない」

「既に登録が住んでる人や大人でも参加は自由なんだけどね」

「なるほどな。だが応急処置なら対象によって内容を変えた方がいいと思うぞ」

ジルコットの言葉は皆が予想もしなかった事だった

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