99-2
「お前が人を褒めるから驚いてんぞ」
「は?」
フロックスの言葉にロキが呆れた声を出す
それを見てジルコットは噴き出した
「クロキュスが変わったのはオリビエの影響か?」
「だろうな。俺がこの町に来た時には既にこうなってたよ」
「…何か納得いかない言葉が交わされてる気がするんだが?」
そうつぶやくロキに苦笑する
「あとは住む場所ですけどここでいかがですか?」
「ここ?」
「俺もここに住ませてもらってる。飯付きで月8万シア」
フロックスが言う
「ちなみにダビアとマロニエも住んでる。あいつらは住み込みでここにいるチビ達を見てもらってる形だけどな」
「住み込み?チビ達とは?」
「庭師と掃除婦に成人前の子供がいるの。合わせて4人。その子たちにあげた玩具がちょっと普通じゃなかったせいで…」
「普通じゃないとは?」
「迷宮のドロップ品だ。ただのボールだと思ってたんだがレアドロップだった」
「…それを子供たちが持ってるってことか?」
「ええ。随分気に入ってしまって手放せとは言えなくて…その護衛を彼らに頼んでるの。一応この屋敷の敷地内だけで使うように言ってるから実体としては子守に近いけど」
私が苦笑しながらそう言うとジルコットは口を開けたまま固まった
「従業員としては庭師と掃除婦、荒節づくりの職人、家族を含めると7人ね。住む場所を提供して仕事で返してもらってるのがダビア達と薬師の親子、家賃を貰ってる普通の住人はフロックスと大工のハリーだけで、あとはロキの従兄妹の冒険者が1人住んでるわ」
「そんなに住んでるのにまだ住めると?」
「空き部屋、一杯あるんです」
「ちなみにここは元々ナルシスが持ってた別荘だ」
「な?」
突然出て来た王の名前にジルコットは再び固まった
「一部の間では結構有名になってるが…オリビエは歌姫の召喚に巻き込まれた被害者なんだ。その補償でこの屋敷を提供された」
「なるほどな…噂では耳にしたことがあるがまさか本当だったとは…」
まぁ普通はそう思うよね
「経緯はともかく、部屋はあります」
「…そうか…馴染の者がいるなら心強いな…」
「では?」
「その言葉に甘えさせてもらいたい。医師としての仕事の方もだ」
ジルコットは静かにそう言った
それを聞いたロキとフロックスは安堵したような表情を浮かべた
「じゃぁ、あとでみんなへの紹介と…タマリへのつなぎも必要よね?」
「タマリのところは俺が一緒に行くよ。明日チェスの相手する日だし」
フロックスが言う
「領主とチェス?」
「タマリの相手になる人がいなかったんだけど、フロックスは強いらしくて」
「フロックスは王の相手もしてたか?」
「たまにだけどな」
何と、王宮ではナルシスと勝負してたのね
「こんにちは~」
「あ、いらっしゃい」
「4人だけどいいかしら?」
ジルコットたちが4人席に座ってるのを見てそう尋ねて来る
一応カウンターで4席というのも有だけど…
「フロックス、ジルコットに屋敷の案内お願いできる?」
「ああ。構わない。部屋は俺の時と同じで好きな部屋でいいんだろ?」
「ええ」
頷くとジルコットを促してカフェから出て行った
案内が終わればサロンで話に花を咲かせるだろう
その後お客さんを案内して通常通りのカフェ業務が再開した
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