96.大量の…

96-1

「大量だぞー」

ダビアとフロックスがそう言いながら戻ってきたのは15時半過ぎだった

店の裏で山積みにされた肉に目が点になる


「多すぎない?」

「別に全部やれとは言ってない」

「まさか森で狩ってくるとは…」

ロキも呆れたように言う


「迷宮はデカいの倒してもドロップになったらちっこいだろ。それにこっちならホルモン系も食える」

この世界で内臓系は殆ど食べられていない

でもバーベキューで出したのをきっかけにダビアは気に入ったらしい


「それは分からんでもないけどな。とりあえず解体くらいしろ」

「おう。そのつもりでここに出したんだ」

よかった

これを解体からやってたら大変すぎるもの


「ついでに部位ごとに分けてくれる?」

「任せとけ。入れ物だけ出しといてくれよ」

「わかった」

積まれた魔物を見て入れ物の数を計算する

大量にあるけど魔物の種類自体は3種類にまとめているようだ

それを確認して適当に大きな入れ物を魔物の脇に積み上げる


「ダビア、ホルモンの下茹でまでお願いできる?」

「任せとけ」

うん。とても頼もしい

ここは任せてしまっても問題ないだろうとロキと共に中に戻った


「ご馳走様。このクッキー、テイクアウトね」

「ありがとうございます」

顔なじみになりつつお客さんと少し会話を楽しむ余裕くらいはある


「今日は随分賑やかね?」

「屋敷の皆でパーティーをするんです。その準備ですね」

「あら、それは大変ね。頑張って」

「ありがとうございます」

にっこり笑ってお見送りする

今のが最後のお客さんだ

ふぅ…とため息をついたタイミングでドアが開いた


「すみません。今日は…カプシーヌ、みんなも!」

閉店だと断ろうと顔を出すと、そこにいたのはカプシーヌ達だった


「そろそろ店は終わりでしょう?準備を手伝いに来たの」

「助かるわ。肉を大量に切らなきゃいけないのよ」

「大量?」

「一体何人集まるの?」

「騎士さん達とその家族で30人以上、あとこの屋敷のみんなとカプシーヌ達で50人くらいになるんじゃないかしら?」

「50?!」

ローズの顔が少し引きつった


「騎士さんたちは数人分は食べるから準備もそれなりにね。まぁ途中で切りながら足すことも出来るから全て今切る必要はないんだけど」

「…頑張るわ。どこでやったらいい?」

「そっちのテーブルでお願い。ロキ、フェイのお相手お願い」

「了解。庭でいいんだろ?」

「ジョン達がもう始めてると思うからそれで大丈夫だと思う。ついでにコレ持って行って」

簡単につまめる野菜スティックとポテトをロキに渡す

「了解、フェイこっち」

カプシーヌの恋人をロキにお願いするとカプシーヌとハグをしてからロキと一緒に出て行った


「順調みたいね?」

「まぁね」

「順調も何も…うっとうしいくらいラブラブよ」

アカシアが呆れたように言う


「無駄よアカシア、オリビエはその上を行くラブラブなんだから」

「…そうだったわね」

イリスの言葉にアカシアはため息を吐く

そんなやり取りをしながらも肉はどんどん準備が進む

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