92-3
「その時にギルドの口座番号を聞いてリストにしておくといい。この先同様の事があればその口座に振り込むことが出来る」
「おお、そんな方法が…なら今口座のない者も開くように依頼しておこう。口座番号はカードを見ればわかるのか?」
「ああ。金額の上に表示されている10桁の番号だ」
この世界にはギルドにしか預金等のシステムが存在しない
その代わりこの世界のどの国でも共通で使える優れものなのだ
さらに預金機能だけの簡易カードもあり、そちらは施設や家族間の共有カードとして利用されている
小さな町では住民登録の体制を整える代わりにギルドの登録を推進する場所もある
町を出た子供が今どこにいるのか知るのにも重宝するらしい
タマリの行動は早かった
宣言した1週間が経つ前に支援金の配布を終えていた
町の中は勿論、屋敷の中も嬉しい悲鳴と笑顔で溢れていた
「で、カメリアは子供たちの簡易カードを作ってそれぞれに10万シアを振り込んだのよね?」
「ええ。独り立ちする時の足しに出来ればいいと思って。残った20万シアでも充分贅沢できるから」
普段のお金の使い方から考えればそれは確かだろう
「ウーは本を買いそうね?」
「分かる?」
「お前毎月買ってなかったか?」
「あれは中古だよ。でも今回は奮発して新しいのを買う!」
ジョンの言葉に満面の笑みで答える
中古の売買が始まってから本は以前に比べて身近にはなったらしい
でも好きだからこそ新しいものも欲しくなる気持ちはよくわかる
「オレゴン達、親父組は酒だろ?」
「良く分かったな。今夜は酒盛りだから晩飯はBBQを希望する」
ナハマがどや顔でそう言うなり皆が笑った
「ブラシュはどうするんだ?」
「俺は…薬草を作るための道具かな」
ブラシュとオレゴンは世帯に支給される10万シアを5万ずつに分けたらしい
ウーの分はジョンがカードに入金済みで世帯分の10万シアは共有のカードに入れておくという
今度旅行に行くのだと、ウーはそう言って嬉しそうに笑っていた
“集い場”と名付けられたギルド横の建物は、雇用を生み出すためにと町民から作業員を募集し、子供から老人まで自分のできる事を率先して取り組んでいる
子供達は机や椅子のペンキ塗りを遊び感覚でやってるけど…
その都度作業に見合った手当てが支払われるため皆のやる気が凄く、完成も早そうだ
広場のベンチの側には小さなテーブルも備え付けられ、屋台で買ったものを広げて食べる姿が見られるようになった
宿の建設は新しい町の建設の需要にもつながるからと、国から魔術師が派遣され、2週間もしない内に完成したのには皆が驚いた
他にも馬車の昇降、待合場所の建設、山の中の避難場所の建設など、町の者の意見も取り入れながら、必要とされるものは少しずつ皆の手で作っていくことに決まったらしい
タマリを中心に復興支援金は有効に活用されているようだ
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