72-3
「な…?」
「これは?!」
「それは君たちの身代わりだ。今から君達にはそれを持って自室に戻ってもらう。身の回りの物だけすぐにまとめてその薬を飲むんだ」
そう言われて手元の薬包紙を見る
「飲んで少しすれば発熱や倦怠感が現れる。そして白い斑点が出てしばらくしてからジルコット殿を呼べ」
「それで上手くいくのか?」
「言っただろう?ジルコット殿も仲間だ。ジルコット殿は診断中に俺を呼び寄せる。一旦未知の症状だと判断し、俺たちは医局に戻る」
みんなフロックスの話を黙って聞いていた
「効果が切れるタイミングで急変したと再び呼び出してもらい、ジルコット殿が死亡を告げる。その頃には俺達にも白い斑点が出ているはずだから、そこで新種の感染症だと広める。」
スラスラと告げられる計画に皆が聞き入っていた
「その後はすぐに死に至る感染症だと王に報告する。君たちは変装し、配られる抗菌袋にその人形を入れて自らの住民票と共に埋葬場所に持って行けば完了だ」
「俺達は死んだことになるのか?」
「心配しなくてもフジェで新たに住民票を発行してもらえる。君たちは王宮を出さえすれば身動きが取れるはずだ。同行者がいるならその手配をする時間くらいは持てる」
その言葉にホッとした顔をする者が数名
「あとは各自フジェに向かい、向こうの検閲でクロキュスの作戦でここに来たと告げればいいそうだ。その後の事は向こうで全て手配してくれる」
「そこまで…」
「ありがたい」
「あと、フジェに着いたらカフェに顔出せとも書いてたな。カフェは1軒しかないから誰かに聞けばわかるらしい」
そこまで言うと精鋭のすべきことを繰り返して伝えた
「薬を飲むかどうかは個人に任せる。勿論その後の行動に対してもだ。ただ、この情報を外に漏らすことだけはするな」
その答えを聞くまでもなく皆薬を飲むのだろうことは分かった
「精鋭でない騎士に称号なしは少なかったな?」
「ああ、大抵地方の町に所属するからここには10名しかいない」
「ならこれを渡しておく。どうせ同室だろ?」
騎士は2名で1部屋を使っている
称号持ちは基本的に称号なしと同室になることを好まない
「今の話をして人形作りだけ手伝ってやれ。精鋭でない者でも3国は受け入れる。王宮にいる称号なしのリストは、3国に渡されるから住民票の事は気にしなくていいと伝えてやるといい」
「…感謝します」
誰かが言うと皆が頭を下げた
「カトリックの妹にはジルコット殿が伝えてくれる。待ち合わせる場所があるならついでに伝えてもらうが?」
「ありがたい。では湖でと」
「湖ね。それで伝わるんだな?」
「はい」
カトリックは頷いた
「ほかに質問がある者は?」
誰も口を開かなかった
「なら準備できたものから始めてくれ。少々時間にずれがあった方が信ぴょう性もあるだろう」
フロックスはそれだけ言うと騎士団を後にした
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