63-3

「すごーい」

「かっこいー」

夕方魔術師が建物の外側を作り出すのを見て子供たちが感嘆の声を上げた


「あの巨大な山がすぐにぶち抜かれるわけだ…」

目の前で見る機会に恵まれなかった面々は驚きと感心で呆けている

そんな皆を横目に棚などがどんどん取り付けられていく


「別の場所で作って運び込むんだね」

「運ぶ手段さえありゃ何とでもなるからな」

そう言っている間にもどんどん設置されていくのだから壮観だ

30分もしない内に全ての作業が完了してしまった


「これで完成ですね。漏れなどがないかのご確認を」

そう言われて皆が自分の希望した部分を確認していく


「ただの台じゃないんだね」

ブラシュが棚の下の扉を開けて驚いている


「基本的に在庫を格納できるよう考慮させていただきました」

言葉通りあらゆるデッドスペースが格納庫になっていた


「こちらの魔石に記録された方の魔力を流していただければ…」

説明しながら彼が魔力を流すと透明な板のようなものが出現した


「結界の応用か?」

「おっしゃる通りです。閉店時はこれで問題ないかと」

そう言いながら再び魔力を流すと板は無くなった


「すごいよ!叩いてもびくともしなかった」

「ふふ…叫んでるのは分かったけど声も聞こえなかったわよ」

「本当?」

初めて見るものに子供たちは大はしゃぎだ


「登録する際はこの魔力キーを差し込んで追加、削除も同様に操作できます」

操作盤にはそれぞれのボタンがあった


「ボタンを押してから魔力を流せばいいのね?」

「左様です」

その答えを聞いて試しに登録してみると無事操作することが出来た

とりあえずカフェにいる私とロキ、店に立っていることの多いカメリアを登録しておき、あとは商品が増えてきたときに考えることになった


翌日、朝早くから商品を並べ始め、開店する頃にはお客さんも興味深げに手に取ったりしていた

「オリビエあれは…」

スイーツを置きに来たアカシアが真っ先に尋ねて来る


「あれね、色々売ってみようと思って」

「私も買っていいの?」

「え?そりゃぁもちろん…何かめぼしいものがあった?」

「あったなんてものじゃないわよ?切り傷や火傷用の軟膏!とても手が出せない代物だったのに…」

そう言えば売値を聞いてなかったなと今さらながら思う

でもこの反応からすれば誰でも手が出せる価格帯にしたのだろう

容器がさほど大きくないし値も下げやすいはずだから


「しかも詰め直しは割引って最高!」

その言葉に思わずロキと顔を見合わせた

容器の節約とリピートによる囲い込みかしら?

オリゴンとブラシュは色々と策を練っていたようだ

アカシアはスイーツのセットが終わるなり雑貨コーナーに飛び込んでいった


「色々考えてるみたいだな」

「だね。ウーの花は絶対売れるだろうし…」

迷宮産だけに色が豊富だ

普通の花屋では手に入らない分少し高めに設定すると言っていた

それでも需要は高いと思う


「野菜連動でサイドメニュー出すのも有かもな」

「そうだね。美味しかったらついつい買っちゃうし」

「まぁ何より、目の前で自分の商品手に取ってもらえるのは強いな。ダイレクトに要望が聞ける」

お客さんの何気ない一言には大きなヒントがいっぱいある

それはこれからのやりがいにもつながる事だろう


「かゆみ止めと消臭剤完成した時が楽しみだよね~」

「…」

軟膏だけであのはしゃぎようだったのだからそれ以上になることは確実だ

ランチを食べに来た騎士や主婦が軟膏に興味を示したのを見れば、口コミで広まるのも早いかもしれない


「みんな本当に働き者だよね」

「…俺以外はな」

「あはは」

バツが悪そうに言うロキに笑ってしまう


「ロキはそのままで十分働いてくれてるよ」

「?」

「主に頭脳と心で、ね」

そう言いながらロキに口づける

照れくさそうな顔にまた笑ってしまった

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