62-2

その日の夕食後、食堂でオリゴンとブラシュと共に薬づくりを試すことになった

「とりあえずかゆみ止めと軟膏を試してみようと思って」

「薬草はこれでいいんだよね?」

ブラシュが摘み立ての薬草を盛った籠をテーブルに置く

どれも洗ってある当り流石だわ


「ドクダミとツユクサはかゆみ止めね。オオバコは切り傷用の軟膏、ヨモギはかぶれや火傷用の軟膏かな」

「しかしそんな簡単に作れるもんか?」

「ん~少なくとも元の世界では作れてたよ。こっちではやってみないと何とも」

「上手く行ったらもうけもんってことでいいんじゃねぇの?」

困惑気味のオリゴンにロキが言う


「まぁ確かにこの薬草もこれ以上置いといたら枯れるだけだしなぁ」

「そうだよ親父。何事もやってみないと」

ブラシュはそう言いながらサクサクと薬草を分けていく


「ドクダミとツユクサはそれぞれこの瓶に詰めてね。長期保存できるように度数の高いアルコールで漬けちゃいます」

「…酒がもったいねぇな」

「ロキ、心配しなくてもこれ、ロキの嫌いな45度のお酒だから」

「あぁ、飲むより燃料に使われるやつか?」

「そういうこと。用途が元々燃料だから入手するのも安いしね」

この世界では酒は飲料と燃料に用途が分かれている

燃料用の酒は度数が高いだけで飲めなくはないものの、美味しいと思う者はほぼいないという代物だ。その分値段は非常に安い。代わりに飲料用は嗜好品になるのでそれなりに値が張ってしまう


「オリビエ入れたよ」

「ありがと。じゃぁふたを閉めて、1週間ほど放置でできあがりね」

「「「は?」」」

3人がこっちを見た


「言ったでしょ。簡単だって」

「いや、簡単ってレベルの話じゃないだろ?」

「難しいよりいいでしょ?」

言い返すと黙り込んでしまった


「じゃぁ次は軟膏ね。こっちはさっきよりは手がかかるから」

「さっきよりは、ね…」

オリゴンが苦笑しながら言う


「私はオオバコを使うから、ブラシュはヨモギを使ってね」

「了解」

「この容器にオイルと薬草を入れてね」

そう言いながら容器を渡す


「入れたよ」

「次はこれを湯煎する」

大きめの容器に熱湯を入れて自分のつめた容器を中に浮かべた

ブラシュも真似して中に浮かべる


「15分くらいこのまま置いて成分を出してる間に濾す準備をするよ」

「濾す?」

「そう。この後オイルだけを使うからね」

「薬草は使わない?」

「軟膏には使わない。でも乾燥させて置いておけば消臭剤として使えるよ」

「消臭剤だと?」

オリゴンが食いついた


「ど…うかした?」

興奮気味のオリゴンに困惑してロキを見る

この食いつきはどう考えても異常だわ…


「あー消臭剤は高い」

「え?」

「簡単には手が出ないんじゃないか?」

「その通りだ」

激しい同意にちょっと後ずさる


「消臭剤って言っても食料庫とかに仕える程度の物なんだけど…」

「それでも普通の家庭では使わないな」

「え…と…何かやらかした感じ?」

「大丈夫だ。原料は誰でも手に入れれるものだし問題ない。オリゴンとブラシュが儲ける道を手に入れたってだけだ」

「そ?ならよかった」

ロキがそう言うなら問題ないだろうとホッとしたんだけど…

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