53-3

「無能の正妃、だったか。王家を謀ったとされたが、俺に言わせればそれに気づかない王家が無能だったともいえる」

レンヌが言う


「確かに。それにしても今回の事…召喚された者に対する仕打ちは我らにとっても許せることではないし、それ以前なぜ歌姫だったのか…」

「そうだな。理由もわからずある日突然異世界に呼び寄せられるのだ。親しい者達とも突然切り離されてな。だからこそ、この世界を揺るがす事態でもない限り召還などするべきことではない」

だからこその協定でもあったのだ


「オリビエについてはモーヴに任せてもいいと思うが?」

「ああ。俺もそれで異論はない」

「ありがたい。ようやく会えた甥に嫌われずに済みそうだ」

モーヴの反応に2人が笑う


「歌姫に関してオリビエから希望を聞いている」

「まず聞こうか」

レンヌの言葉にポンセも頷く


「歌姫は既にオナグルの手つきになっている」

「「!」」

「それ以前、元の世界でも性には奔放で注目されることを望んでいたらしい。できればこの世界で女性の婚前行為に寛大な場所か一妻多夫の場所にと」

「普通の町では騒動の方が多くなりそうだな」

「確かマアグリにあったか?」

「山間部ではあるが一妻多夫の町がある。女児の出生率が極めて低くそうせざるを得なかったのだが…女性優位で婚前行為も当然のように行われているはずだ」

「では保護出来次第説明して受け入れてもらった方がよさそうだな?」

「ああ。性欲旺盛な女性が増えるなら喜んで受け入れてくれるだろう。俺から先に話は通しておく」

「これで2つの件は見通しが立った。最後のソンシティヴュの件だが…」

モーヴの言葉に沈黙が広がる

国の問題は多くの人の人生も含んでいるのだから当然だ


「しばらく様子を見るか?ほうっておいても自爆しそうな気がするんだが…」

レンヌが呟くように言った


「王家に反感を持つ騎士をフジェに呼ぼうと思っているのだが」

「あぁ、それはいいんじゃないか?騎士なら家族も同行するだろうが行先がフジェなら元は同じ国だ」

「その手で行くか」

「その手?」

2人はポンセを見る


「俺らの国で有用な人材を引き抜いていく。その周りで希望する者があれば同時に受け入れる」

「なるほど?平民にも噂を流してやれば個々に判断して流れてくるかもしれんな」

「どの様な者がどれだけ流れてきたか、あるいは引き抜いたかは検問で記録して3国で共有しよう」

「そうだな。称号持ちは拒否させてもらうがな。甘い蜜を吸い尽くして逃げてくるような者は必要ないからな」

「ははは…称号持ちが要請して来たら名前をさらしてやればいい。恥さらしだとな」

「称号持ちの一族のリストなどはあったか?」

「用意させてある。明日には送っておこう」

「それは助かるな。検問に配布して身分証を照合すればいい。もし後から偽装が判明してもそれを理由に取り締まることが出来るからな」

「とりあえず様子を見ながら進めよう。定期的に集まれるか?」

「勿論だ。この件の協議は最優先事項にしておこう」

「俺も大丈夫だ」

3人で意思疎通が図れたと判断し今回のところは解散となり、翌日よりソンシティヴュから職人達を中心に引き抜きが開始された

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