52-4

「…とにかくあなたが規格外の力と可能性を持っているのも、それが召喚されたためだろうこともわかったわ。オリビエ、あなたを歓迎します」

「カモミ…」

「クロキュスをお願いね。今度あなたのカフェにお邪魔させてもらうわね」

「ええ。お待ちしています」

おだやかな笑顔を見せてくれたカモミに私まで嬉しくなった


「今後国境がフジェの町になる関係で検問の場所も移る。騎士や魔術師団も同時にフジェの町に移ることになるだろう。道の整備が済めばこことの行き来も楽になるはずだ」

「できれば町の警備にあたる騎士団にはソンシティヴュのことが分かる者も配置したい」

「なるほど。そこにソンシティヴュの王に反発を持つ騎士をということですね?」

アネモンの言葉にロキが続けた


「話が早くて助かる。フジェの町なら家族も身構えずに済むだろうしな」

「フジェからこっちに嫁いできた者も多い。こっちの町でも生国の事を知る騎士がいれば安心できる者も多いだろう」

「では引き受ける人数に制限はないと?」

「そうだな。ただ、混乱を巻き起こす元凶となった称号持ちは不要だ。都合が悪くなったからと鞍替えするような奴に民を任せることは出来ないからな」

「…まぁそれは妥当な判断ですね」

その言葉は何かを考えながら吐き出された


「最も、お前の推薦する者なら別だがな」

モーヴが続けた言葉にロキは明らかに安堵の表情を浮かべた

きっとロキの交友関係を知った上での言葉だろう

そこまで考えてくれるのかと感心してしまう


「お前のことだ。明日にはフジェの町に戻るのだろうが…時々ここにも顔を出してくれ」

「ああ。王族が集まるときくらいは時々来るよ。月1は流石に勘弁して欲しいけどな」

「みんなにもそう伝えておこう」

「オリビエ」

「はい?」

「オリビエが巻き込まれた件をナルシスは隠した。歌姫に対する血の契約や離宮への監禁、脱走したことの隠蔽に関しても他の2国と協議する必要が出てきた」

「…」

「オリビエをその場に連れていくことも、オリビエの存在を広く知らせることも無いように力は尽くすが、必ずと約束することは出来ない」

モーヴの言葉に俯く私の肩をロキが抱き寄せる


「だが、オリビエ自身の望みが今の生活を守ることであれば、それを叶えるよう動くのもこの世界の王族の務めだ」

「…私はロキと今の生活を、このまま続けていきたいです」

「わかった。協議の中でオリビエの協力が必要になるかもしれない。それ以外にも召喚者についての情報を整理する必要がありそうだ。その時はシャドウに伝えてもらう。出来る限りでいいから協力を頼めるか?」

「もちろんです。それが自分の為になるならなおさら」

そう返すとモーヴは満足げに頷いた


「あ…この世界で女性の婚前行為に寛大な場所か一妻多夫の場所は有りますか?」

「あるにはあるがなぜだ?」

「イモーテル…歌姫は元の世界で多数の男性と関係を持っているんです。それに彼女にとって注目されるのが何よりも重要で、一人で満足できるタイプでは…」

「なるほど。それなら元々そういう町にいたほうが、歌姫にとっても周りにとってもいいということか。そういうことなら協議の時にもそう進言しておこう」

「ありがとうございます」

私はモーヴに対し頭を下げた


大まかな話はそこで済ませ、今後の動きも示し合わせが済むと解散となった

私たちは翌日、シュロお勧めの武器店で武器を調達してからフジェの町へ帰った

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