49-3

「ここにきてまさかのヒドラ…」

9つの顔が私を捉えていた

自分の顔が引くつくのが分かった


「知略に力に魔力…なるほどね…」

鑑定で得た情報で納得する


この世界のヒドラは元の世界とは違うらしい

元の世界では頭は5つ、それぞれ火、水、風、土、雷の属性を持っていた


でも目の前のヒドラの頭は9つ

4つは魔力が無効

5つは物理が無効

魔力だけでも力業だけでも倒すことは出来ない

そして首を落としてからの再生までの時間はわずか30秒

倒すためには成人男性の体の5倍ほどある全ての首を、他が再生する前に落とす必要があるのだ

いかにして戦うか、そこに知略が必要となるということなのだろう


「これ、鑑定なかったら永遠に終わらないんじゃない?」

再生することは気づけてもその時間までは分からない


本当に意地の悪い迷宮だわ…

それになによりドロップの出ない迷宮があるなんてね

前の階層で100匹以上倒して何もなし

好き好んで潜りたい迷宮ではないわね

こんなことを考える当たり私もちょっと壊れかけてるのかしら?

でも仕方ないと思うのよ

ある意味自分の中の概念を覆されてるんだから…


「でも…なめて貰っちゃ困る」

私はインベントリから9つのショートソードを取り出した

インベントリの中には、元の世界で鍛冶の見習いしてる友人達からもらったショートソードやロングソードが100本近く入ってる

売り物にならないしこれ以上再利用できない物を、近くにあった迷宮の飛び道具の物理攻撃でしか倒せない魔物用にもらったものだ

あの魔物、上空高くを飛んでる上に武器が必ず貫通して天井に刺さるから回収できないのよね

ストックしてでも倒したかったのは、その魔物からしか手に入らないスパイスがあったから

まさかこんなところで使うことになるとは思わなかったけど…

そのショートソードを風魔法で浮かせると火と風の魔力を纏わせる


「様子見なんてぬるい事言ってられないよね…」

魔力はまだ残っている

でも血が不足しているだけに長期戦はまずい

あらゆる可能性を考えてできる限りの準備を整える

マナはどこまで効くわからないだけに保険でしかないけどね

そして準備が完了して初めてフロアに足を踏み入れた


瞬時にこちらに向かってくるヒドラの目に向かってにショートソードが飛んでいく

触れた瞬間火系の魔法が発動し風魔法が付近を覆いつくす

魔法が効く頭にはそれで問題ないはず

そして物理しか聞かない頭は目に気を取られているところで首を落としていく


「くっ…!」

3つ目の頭に切りかかった瞬間残っていた頭からの攻撃をもろに食らい地面にたたきつけられた

しかも攻撃を食らったのはさっきポーションでふさいだばかりの場所

息が詰まりそうな衝撃と血の気の引く感覚に、とてつもない恐怖に包まれる

せり上がり吐き出されたものは血以外の何物でもなかった


その瞬間ロキの心配そうな顔が浮かぶ

「負けられない」

念のために取っていた保険、準備していた魔法陣からのカマイタチにダメもとで火魔法を乗せてを発動した

これでだめならリタイアしかないのかな

でも…


縦横無尽に動く刃が残っていた物理の頭だけでなく、目からの攻撃で弱っていた頭を含めてヒドラの体中を刻んでいた

マナは魔法攻撃の扱いではないらしい

こっちの方が効果あるとか…

想定外の現実に脱力した


次の瞬間大きな魔力に包まれるのが分かった

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