47-2
「ん…」
いつもと違う何かに目を覚ます
「ロキ?」
いつもなら自分が抱きしめられているはず
でも今、ロキの頭が私の胸元にある
腰に回された手には寝返りを打つことも出来ないほど強く抱きしめられている
幼馴染のダビアさんでさえきっかけがないと思い出せない事実は、一体どれだけ長い間自分の中だけに秘めてきたのだろうか
シャドウとの仲をみればカクテュスを拒否してるようには見えない
ひょっとしたら王宮に勤めていたのも何か理由があったのかもしれない
いつもと違い甘えるように求められたのを思い出す
自然とロキの頭を包み込むように抱きしめていた
「ロキが何者だろうと、何を考えていようと変わらないよ?」
そうささやいたときロキの体が一瞬強張った
「起こしちゃった?」
「いや…」
離れようとしたらさらに強くしがみ付かれる
「…かっこわりぃ」
「かっこいいロキもかっこ悪いロキも、優しいロキも、情けないロキも…どんなロキでも私の気持ちは変わらないよ?」
「…」
「私だってロキを支えたいし助けたい。ロキが気を許せる場所でありたい。無理にとは言わないけど…」
いつもロキがしてくれるようにロキの頭頂部に口づける
するといきなり布団の中に引きずり込まれた
「ロキ?」
さっきまでと逆にロキの腕の中に抱きこまれていた
「絶対離さない」
「うん。離さないで」
「返品はきかないから」
「ふふ…返品する気もないけどね」
2人でしばらくじゃれ合っているうちに外が明るくなってきた
「そろそろ起きるか」
「うん。ご飯作らなきゃね」
簡単に身支度してキッチンに向かう
「そういえばシャドウは食事ってどうしてるの?」
「さぁ、聞いたことねぇけど交代で取ってんじゃねぇの?」
「そっか…シャドウ!」
呼ぶと1人が現れる
「お呼びで?」
「うん。これ、食べないかと思って」
スイーツを3つシャドウに見せる
「まぁ!」
シャドウの顔に笑みが浮かんだ
「…その顔はあいつらが羨ましかったって辺りか?」
「おっしゃる通りです。非常においしいといつも自慢されておりますので」
「そんなにあげてたの?」
どちらかというとそっちの方が驚きだ
「ちょっと無理言うときは大抵…?」
「知ってたらちゃんと用意したのに。でも喜んでくれてるならよかった。希望があれば教えてくれると嬉しいんだけど…」
「贅沢を言えばカフェのケースを端から順に堪能したいと」
「え?」
「どれも目移りするほどおいしそうですので」
「ふふ…ありがとう。じゃぁこれから色々試してね」
そう言いながら先ほど見せたスイーツを3つ手渡す
「ありがとうございます。では」
シャドウが消えた直後足音が近づいてきた
「何だお前ら早いな」
「今降りてきたところだ。ダビア、ついでにそこの窓開けてくれ」
「んー」
ダビアが言われた通り窓を開けると鷹が飛び込んできた
鷹はロキの周りを2周してから何かの封筒を差し出した
「ご苦労さん」
魔力を与えてやると飛んでいった
「今の鷹は?」
「郵便物を運ぶ鷹だ。これは王からだ」
「王がなんだって?」
ダビアが身を乗り出してくる
「…歌姫が脱走したらしい」
最後まで目を通したロキはつぶやくように言う
「脱走?イモーテルが?」
「いや、契約とかどうなってんだよ…」
「3種類とも無効になってたらしい。おそらく召喚された影響か何かじゃないかって。もし見かけたら連絡が欲しいとさ」
「脱走ってよくできたな?」
「イモーテルなら楽勝かも。元々変装はあの子にとって日常だしね。あの子のことだからメイドにでも化けて王宮から出たんじゃないかな?その後は普通の服に着替えて…あの髪さえ目立たなくできれば人ごみに紛れて既に王都を離れてるでしょ」
「まじか…言われてみりゃメイドの顔全部覚えてる騎士なんていないな」
「王族に取ったら爆弾だな。歌姫まで隠したとか独占したとなると…」
「脱走したなんて通用しないものね」
呆れた笑いしか出てこなかった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます