46-3
「やぁお二人さん」
領主のタマリ・ジフロレは笑顔で迎えてくれる
「新婚生活はどうだい?」
「その話はまた今度ゆっくり…ちょっと急ぎの相談だ」
ロキの表情に何かを悟ったのかタマリは表情を変えた
応接室のソファに座るなりロキを見る
「王都で処刑が実行されたのは知ってるな?」
「ああ。王族を謀ったとか…」
「どうもきな臭い。残ってるゴールド3家が陰謀を企んでるかもしれない」
「…この町が一番低いリスクで立ち回る方法はあるのか?」
タマリの言葉にロキはニヤリと笑う
どのような方法を取ってもリスクがあることを承知していることに加え、町として立ち回ろうとする意志はなかなか持てるものではない
「一つだけある」
「教えてくれ」
「隣国に付く」
ロキの言葉に沈黙が流れた
「…確かにこの町は隣国カクテュスとのつながりの方が強い。実際に娘が隣国に嫁いだ者も、隣国から嫁に来た者も多い。その血縁であれば簡単に受け入れてもらえるかもしれないが、そうでない者も半数以上いるのが現実だ」
「分かってる。でもこの町の総意として隣国に付く、という形なら俺がカクテュスの国王と交渉する」
「…そんなことが可能なのか?」
「俺の亡くなった母親は今の王の妹だ」
「な…?」
「母亡き後国に来いと何度も打診されてるが俺はそれを全て拒否してきた」
「…戻る条件にするということか?これまで拒否してきたのにか?」
「会ったこともない王族を親戚と思えないだけで、拒否してきた理由は特にないんだ。しいて言えば王宮に勤めていた手前、こっちの王族が反対するのを振り切ってまで行くつもりがなかったくらいか」
サラッと告げる言葉はきっと本心なのだろう
「…本当に可能なのか?」
「王家からの誘いの中に…こいつにも会わせろというのもある。その条件としても使えるはずだ」
「私も?!」
驚きの声をあげると苦笑で返される
「俺達にはもれなくこの町が付いてくるとするのか、戻るにはこの町をとするかは向こうの出方を見て決める。でもそれは、この町が総意としてカクテュスの国民となる覚悟を持ってる場合に限る」
「今、屋敷の者に情報を広めてもらっています。みんなゆっくり考えたいでしょうけど猶予ありません」
「許される時間は?」
「1週間」
「分かった。すぐに皆を集めよう」
領主はそう言うと領地放送を流す
領地放送とは領地のいたるところに取り付けられた魔道具を通してどこにいてもその放送を聞けるようにしたもので緊急時などによく使用されるものだ
流されたのは13時に全住民が中央広場に集合すること、今後の行く末を左右する重大案件であることだった
ダビア達たちから様々なルートで情報が回っているため大半の者が心構えを持ったうえで集まってくる
一度屋敷に戻った私たちも今度は子供達もつれて広場に向かうことにした
最初こそ緊迫していたものの、気付いてみたら満場一致で隣国に付くとその日のうちに結論を出していた
どうやら前領主までの行いが酷すぎたらしく、隣国の商人に助けられていたことが大きな決め手となったらしい
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