46-2

「そのあたりの真相より、これからどうなるかの方が問題ですね」

マロニエの言葉に皆が顔を上げた


「この町は国境に近いわりに国からは軽視されてる。たとえ忘れられた町と言われていても、国同士のいさかいになれば、意志に関係なくソンシティヴュの国民として立たなければならないはず」

「でも商人たちの往来を考えれば隣国とのかかわりの方が強いのに…」

スタンピードの際にも助けてくれた隣国に刃を向ける等、この町の優しい人たちにとったら酷なことだろう

助けてくれない国の為に、助けてくれた国に刃を向ける

子供でもそれがおかしなことだとわかる


「町として隣国に付いた方がリスクが少ないかもしれないな」

「この町の人間はソンシティヴュの言葉と同様に、隣国の言葉を話すこともできるし旅行で隣国に行くものも多い。検問ですらこの町の人間だとわかった途端歓迎される」

住民にとってソンシティヴュよりも隣国の方がなじみが深い者も多い

それ以前にこの町が成り立ってるのは隣国のおかげともいえる


「…仮にそうだとして、それは可能なの?」

「強力な伝手があればあるいは…でもそんな都合よくは…」

「…この町の総意としてなら交渉出来るぞ」

その場の不安を遮る様にロキが言った


「は?」

「どういうこと?」

「俺の母親は隣国の第5王女だった」

「あ…」

ダビアが言われて初めて思い出す


「え?でも血縁はいないって…」

「この国では嫁に入ったら縁が切れたとみなされる」

「なるほど…」

「でも隣国は違ったような…?」

「ああ。何度も国に来いと打診されてる」

「国に来いって…クロキュスが王族に戻る…ってことか?」

マロニエがギョッとしたように言う


「そうなるな。まぁ今は王に5人の子供がいるから、俺がどうこうってことはないけどな」

「でもだからと言って交渉なんて出来るものなのか?」

「言ったろ?何度も国に来いと打診されてる。俺はそれをずっと拒否してるってことだ」

「つまり…国に行く条件としてこの町をってこと?」

「ああ。ちょうど国境付近で地形も隣国に食い込んだ場所にある。そのおかげで迂回するより楽だからとこの町で取引をする商人が多い。領主も国の支援が少ないと嘆いてる」

「総意も得やすい?」

「多分な」

皆で顔を見合わせる

もう言葉がなくてもどう動くかはお互いが分かっていた


「処刑されたのが昨日、おそらく総意を得るタイムリミットは1週間」

「了解」

ダビアとマロニエが飛び出して行った


私はカメリアとナハマに、ロキはジョンとオリゴンに今の話を伝える

ブラシュとウーに3人の面倒を見てもらうように頼むとみんなで町に向かいそれぞれの方向に散っていく


「行こう」

私はロキに促されて領主であるタマリの家に向かった

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