44-2

「そういえばオリビエはどうしたのかな?あのイケメンと一緒だから死んではいないだろうけど…」

あれからもう半年以上が経ってしまったらしい

でも自分の中の明確な記憶は召喚されてからの10日程と、この1か月ほどのものだけでその前の数か月は朧げにしかない

あとの時間をどう過ごしていたのか殆ど覚えていないのだ


「この1か月みたいな状態が続いてたんだろうけど…」

オナグルを盲目的に信頼する自分と怒り狂う自分

真逆の気持ちを自覚して気持ち悪くて仕方がなかった

オナグルは私が満足してなくても自分が満足すれば終わりで私は常に欲求不満だったのだ


「オリビエを頼るのは癪だし、頼るとしてもどこにいるかもわからないしね。とにかくここじゃないどこかに行ければいいか」

呟きながら外の様子を伺う

揺れる馬車の荷台は安い作りなのも手伝って居心地が悪い

かといって目的地もなく自分の足で動くなど論外だ

その時ふと、この世界のどこかにオリビエがいるんだと思った


「不思議ね。あんなに煩わしい相手だったのにそのことが嬉しいなんて」

幼い頃は仲良かったはずなのだ

でもいつからか張り合うようになった

最もそれが私だけだったから余計にムキになったんだけど


元の世界の事を思い返していると馬車が止まった

「休憩?」

そう思いながら荷物の隙間から這い出て馬車を降りた


「な…なんだあんた?」

男は突然私が降りてきたことにこれでもかというほど驚いている

30代半ばくらいのがっしりした体を持つ男

それがこの荷馬車を選んだ理由でもある

私は一瞬微笑んで見せると再び荷台に乗りこんだ


「おい何なんだあんた…!」

男が私を降ろそうと後を追って荷台に乗り込んで来ると有無を言わさず押し倒す


「…は?」

男に馬乗りになると纏っていたワンピースを脱ぎ捨て男のトラウザーズをくつろげる


「何やって…」

男が自分の身に起きたことを認識できた時には、彼の分身が私の口の中に欲を吐き出していた


「次はあなたが楽しませてくれるんでしょう?」

妖艶に見える笑みを向けると再び起き上がった男の分身を自らの中加えこむ

そうなってしまえば私の思い通りの展開になる

オナグルにはない雄々しさ

オナグルが与えてくれなかった快感に私も夢中になっていた

理性の切れた男は私の体を貪り何度も私の中で果てた


「…あんたの望みは何なんだ…」

落ち着いた後で男は尋ねた


「そうね…ここから一番近くの町まで連れて行って。代金は休憩の度に体で払うって言うのでどうかしら?」

男にとって悪い話ではないはず


「ここから一番近くの町は俺の目的地でもあるから構わないが…1週間はかかるぞ?」

その体を抱けるなら俺にとっては都合がいいがと男は言う


「今みたいに満足させてくれるんでしょう?」

「…いいだろう。その代わり今からこれを身に着けてくれ」

荷台の荷物の中から布の少ない服を取り出した


「これは?」

「踊り子の衣装だ。それならすれ違う者にも怪しまれないし、移動中でもあんたを抱ける」

男はそう言ってニヤリと笑う


「俺が抱きたい時に抱かせてもらう。それがイヤならこの話は無しだ」

「…まぁいいわ。ただし、町に付いたら服を買ってもらうわよ?」

「ああさっき着てたみたいな庶民のワンピース1着だけなら買ってやる」

流石は商人である

安請け合いはしないようだ

それでも私にとっても損はないんだけどね

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る