41-2

翌日開店準備をしていると表がざわついていた

「何だ?」

ロキも不思議そうに外を見る


「開店時並みの人がいるんだけど…」

とりあえず開店時間になったのでドアを開けると…


『おめでとー!!』

大勢の声と共に拍手が聞こえてくる


「え…っと?」

「結婚の前祝よ」

そう言ったのはカプシーヌだ


「おめでとう。これからもカフェを続けてね」

「ありがとう…」

思わず涙ぐむとロキが頭を引き寄せる


「こんなとこで泣くな馬鹿」

「だって…」

「ったく…あ、おい!ロベリ」

「なにー?」

ロキは走り回っていたロベリに声をかける


「カメリア呼んで来い」

「はーい」

「ダビア!コルザと誘導頼む」

「は?なんだこの人…」

「祝いらしい」

驚くダビアにロキは淡々と答える


「ロキ、私達が手伝うからオリビエ落ち着かせてきてよ」

カプシーヌとイリスが中に入ってスイーツとドリンクだけはと捌きはじめた


「ごめ…」

「いいから。みんなありがとな。ゆっくりしてってくれ」

ロキが皆にそう言いながら私を屋敷の方に促した


「そんな泣かなくてもいいだろ」

「ごめ…泣くつもりなんてなかったんだけど…」

何とか涙を止めようとしても次々と溢れてくる

涙が落ち着くまでの5分ほど、ロキはずっとそんな私の背を優しくなでてくれていた


「落ち着いたか?」

ようやく体を離した私の顔をのぞき込むロキは少し心配そうだった


「ありがと…あんな風に祝ってもらえると思ってなかったから…」

「こっちじゃあーいうのは普通に見かけるけど向こうは違ったのか?」

「うん。よっぽど親しい人を除けば他人とはあんまり関わらないかな…」

「なるほどな。とりあえず落ち着いたならカフェの方に戻るか?」

「うん。カメリアたちに迷惑かけちゃった」

「こういうのは迷惑とは言わねぇよ」

笑いながら言うロキに促されてカフェに戻る


「おかえり!」

カプシーヌが真っ先に声をかけてくれう


「ただいま。皆さん驚かせてすみません…それと、ありがとうございます」

まだ残っている沢山のお客さんに向けて頭を下げるとあちこちから拍手が聞こえた


「カメリアたちもありがとう」

ダビアと子供達にもお礼を言うとお祝いだからいいよと返ってきた


「カプシーヌとイリスには一つサービスするから好きなの選んでね」

「本当?得しちゃったかも」

イリスが大喜びでスイーツを選んでいた


「そういうつもりで手伝ったわけじゃないけど…ここは貰っておいた方がよさそうね」

カプシーヌは苦笑しながら選んで持って行った

大半のお客さんがお祝いの為に集まってくれていたらしく少しすると店先も落ち着き静かになった


「ロキも何か食べる?」

「いや、コーヒーだけでいい」

すっかり指定席となったカウンターの内側にある席でロキはいつも本を読んだり書類を作ったりしている

すっかりなじんだその光景がこれからも続いていくのだと思うとついニヤケてしまう


「オリビエちゃんおめでとう!とうとうお嫁さんになるんだって?」

そう言いながら入ってきたのは本屋の奥さんだ


「ありがとう。でもとうとうって何?」

「ここにきて半年かい?その間ずっと上手くかわしてたんだろう?とうとう逃げ疲れてつかまったって旦那が言ってたからさ」

「…あのくそ親父…」

ロキが呟く


「あはは!まぁそれは冗談だけど、ちゃんと幸せにしてもらいなよ。ロキのことだから心配はいらないだろうけどさ」

豪快に笑いながらも目線はショウケースの中のスイーツに注がれている

その後もカフェのお客さんにお祝いの言葉を貰う日が続いた

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