36-3
並べられていたものはほぼ引き取られていき、残ったものの中でも家具やラックだけは倉庫代わりの部屋に入れておき、好きに持ち出していいということにした
話し合った結果、暮らしている中で物の量も変わるから、皆で使いまわすのもありだろうということになったのだ
「ところであの本棚は?」
マロニエが気になっていたのだと尋ねて来た
「あれは元の世界の本なのよね。別に読んでくれてもいいんだけど文字がね…」
「あぁ、読めないってことか」
納得いったように頷いた
「ロキが読みたいって言うから、文字の変換表は作るんだけどね」
「それ僕も欲しい」
ウーが言う
「…ここの本読む以外に使い道ないわよ?」
「うん。でもこんなに沢山あるんだよ?」
文字が分かれば読めるならその方がいいという
「俺も欲しいな。知らない世界の事を知るのは面白そうだ」
「そうだな。俺は図鑑系だけでも読んでみたい」
マロニエとダビアが続く
「私も料理の本を読んでみたいわ。オリビエの料理は初めて見るものばかりだもの」
「ぼくもー」
「えほんがいっぱいあるもん」
コルザとロベリまで乗ってくる
「絵本にはこっちの言葉を書き込んでいこうと思ってるの。コルザたちは先にこっちの文字をちゃんと読み書きできるようになった方がいいんじゃない?」
「んーじゃぁその絵本で両方勉強する」
あら、絵本で2つの言語を同時に習得する気かしら?
「なら俺も絵本に書き込んでいくかな。使ってるうちに覚えれそうだ」
「それいいな。俺もやってみよ」
ロキとマロニエはかなり乗り気だ
「と、とりあえず変換表は皆の分用意した方がよさそうね」
「時間がある時でいいから本棚の中を区分けしてもらえないか?」
「区分け?」
「絵本と図鑑がこの辺に固まってるのは分かったが他はさっぱりだ」
「小説とか料理の本とか…そういう区分け?」
「あぁ。すぐでなくてもいいんだが」
ナハマは申し訳なさそうに言う
「それくらいならお安い御用よ。ついでに子供用は下の方に固めた方がよさそうだし早めにやっておくわね」
「みんなが見るならこの本棚はサロンに置いた方がいいんじゃないか?」
「それもそうね。それはすぐに出来るからやっちゃおうか」
全てを一旦インベントリにしまうと皆でサロンに移動した
「こんな感じ?」
壁際に壁面収納のごとく本棚を並べた
その前にカーペットを敷き、大きなクッションを3つ程適当に並べる
「こいつは贅沢だ」
クッションに身を預けながらそう言ったジョンの顔はにやけている
子供達は寝転がって絵本に手を伸ばしていた
気に入ってくれたなら何よりだ
「このカーペットとクッションも向こうの?」
「そういやこんな模様は見たことが無いな…模様というより織物か?」
「そう。織物の裏にクッション素材をあしらったカーペット。クッションは向こうで一時期かなり流行ったものなのよね。人間をダメにするクッション」
「人間をダメにする?」
ロキが首を傾げる
「ロキ、使って見りゃその意味が分かる」
ジョンが私の代わりに答えた
「?ああ」
ロキは首を傾げながらクッションに身を預けた
「…これは…」
「確かにダメになるな」
残っていた1つに身を預けたダビアが続けた
「でしょう?人気が出すぎて犯罪が多発したせいで生産がストップされたの。だから私が入手できたのはその3つだけ。オークションでは今でもすっごい高額で取引されてるみたいだけどね」
「犯罪?」
「店だけじゃなく工場が襲撃されたみたい」
その言葉に皆が顔を見合わせた
「とにかく、変換表を作るのは最優先事項にするとして…先に夕飯にしましょうか」
「そうだな。腹減ったし」
「本は逃げないからな」
ナハマの言葉に皆が笑いながら食堂に向かった
夕食後すぐに変換表を作ったのは言うまでもない
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