35-3
「まぁ片付けはおいおいすればいいだろう。オリビエ俺は腹が減った」
「僕も」
「だよね。もう準備出来てるから食べましょう」
そう答えると子供たちは我先にと降りていく
私達も後を追う様に降りて賑やかな食事が始まった
「あの飼料にしかならんものからこんなものがなぁ…」
ナハマは順に口に運びながら驚いた顔を崩さない
「こりゃ作り甲斐がありそうだ」
「じゃぁ改めて、これからよろしくね」
「それはこっちのセリフだ。ただ先祖から引き継いだだけの仕事を初めて誇りに思った。お前さんの望み通りの荒節を作って見せる。だからお前さんは…」
ナハマは私の目を見て続けた
「お前さんは俺に…この荒節の可能性を見せてくれ」
飼料としても廃れる一方だった荒節を作り続けてきたナハマ
この先の生活を考えれば不安しかなかっただろう
「あなた一人じゃ生産が追い付かないってくらい有名にして見せるわ」
それは、だしが一般に浸透した未来なら充分に可能
商店街で出汁の香りが漂ってくるなんて素敵な未来を私自身が期待してるのだから
そんな私たちを屋敷の皆が見守ってくれていた
「ナハマ僕もお手伝いする!」
「ハオのご飯自分で作りたい」
コルザとロベルがナハマにねだる様に言う
「ハオってあの猫の名前?」
「「「うん!」」」
どうやら3人で決めたらしい
ハオは元々ナハマの荒節を気に入っていただけにそれをご飯にするならと、コルザとロベリは手伝いを買って出たようだ
「手伝いって言ってもなぁ…これまでと違ってオリビエの元での仕事になるなら…」
「構わないわよ。ジョンやウーの植え付けなんかも手伝ってるしね」
「「うん!」
「まぁ…雇い主のオリビエがいいなら構わんよ」
「「やったぁ」」
2人は顔を見合わせ喜びあっていた
手伝いとは言え、色んな仕事を体験できるなら2人にとって悪いことじゃない
そこから自分に向いてること、好きなことを見つけていけばいいのだから
「そうなると問題は…」
「問題?」
「うん。削り器がこれしかないからね」
インベントリから取り出した削り器は元の世界から持ってきたモノになる
「前に道具屋に行った時には見かけなかったのよね」
「あぁ、なら作ってもらえばいいだろ」
ジョンが言う
「作ってもらえるの?」
「材料さえありゃ現物見せたら作ってもらえると思うぞ。それにはその辺にある材料しか使ってないだろ?」
「まぁそうね」
削るための刃、それ以外は木だ
「じゃぁナハマ、明日にでもこれ道具屋さんにお願いしてもらえる?ナハマの分と予備を1つ。あと…子供サイズで2つね。費用は勿論こっちで持つから」
「あぁわかった」
ナハマは削り器をまじまじと見ていた
「この刃の角度を変えれるのは?」
「厚みを変えるためね。厚みで風味が変わるのよ。実際に試したら分かるわよ」
残っている荒節も渡すと色んな厚みで削り始めた
それを皆が手に取り口に運ぶ
「一番薄いのと厚いのを比べたらわかりやすいよ」
首を傾げる子供たちにそう言うと言葉通りに口に運んだ
「全然違う!」
「すごい!同じものなのに…」
「おいしー」
うん。リラは食べるのを純粋に楽しんでるだけね
可愛いからいいけど
「こいつは本当に奥が深いな」
「でしょう?」
「…オリビエがこういう顔して失敗したことって無いんだよなぁ」
ダビアが苦笑しながら言った
「確かに。これは本当に期待できそうだ」
「よかったね。ナハマ」
ジョンとウーの言葉にナハマは大きく頷いていた
この日から1週間ほど皆に試食してもらいながら、ナハマの技術を安定させてからカフェで出すことにした
それを境にカフェに鰹節だけを買いに来るお客さんができるなど、この時は思いもしなかった
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