35-2

2人の反応を少しドキドキしながら見守っていると…


「まぁ…」

「これは美味いな」

「このふりかけ子供たちが喜びそう」

「この甘辛さは酒のアテによさそうだな」

なかなか感触の良い言葉が飛び出してきたのにホッとする


「どう?これは知ってもらえば売れると思わない?」

「絶対売れるわ。これを飼料にするなんてもったいない!」

カメリアが言い切った

普段から料理するカメリアがここまで言うなら期待も出来そうだ


「お前がナハマを雇ってまで抱え込もうとした理由がようやく理解できた」

「でしょう?ちなみに売る時はこの鰹節の状態でしか売らないわよ」

「え?どうして?」

「削り器を用意するのが大変だって言うのと…」

「この状態なら真似ることは難しそうだな」

ロキが納得したように続けた


「その通り。流石ロキ。私はこの生産を独占したいんだよね」

「そっか…確かにそうね。それに飼料として出回ってるから、そっちを知らない方が抵抗もないかも」

「それもあるわね。まぁ最初の内はナハマがどれだけ量産できるかわからないから、鰹節のまま使えるものをカフェで出して売ろうと思ってるんだけどね」

「鰹節のまま?」

「そう。たとえばこのお豆腐に…」

冷ややっこを用意して鰹節と小口切りにしたネギを乗せる


「これであとはいつものように醤油をかけて食べるの」

「これならだれでもマネできるわね?」

「でしょう?こういうので鰹節を広めてからふりかけ、最後にだしって感じかな?」

「流石オリビエね」

「ふふ…ありがとう」


「迷宮の顆粒だしでも充分だと思ってたけど…これを知ったらもう駄目ね」

「顆粒だしも補助では十分使えるんだけどね。だしの旨味は断然こっち」

カメリアと2人ではしゃいでしまった


「迷宮品は普通の奴は入手できないからな。何にしても美味いものが食えるなら俺は充分だ」

ロキはそう言いながら立ち上がった


「どうかした?」

「帰ってきた」

そう答えた直後エントランスが騒がしくなった

流石というかなんというかって感じだわ


「おかえりー」

気づいたのは私達だけじゃなかったようで子供達もダビア達と一緒に飛び出してきていた


「ナハマはどこの部屋にするの?」

「左の階段上がって正面の部屋だ。お前らも手伝え」

ジョンが言う


「「はーい」」

「リラは?」

「リラはナハマを案内してやれ」

「分かった!」

役割を与えられて喜ぶリラは本当にかわいい


「リラ、ゆっくりでいいからね」

「うん!こっちだよー」

リラに誘導されて皆で手分けして荷物を運ぶ

ただ、最後に残っていた分はロキがインベントリに入れていた


「本当にこんなにいい部屋を使わせてもらっていいのか?」

「残念ながらこれ以下の部屋がないな」

ロキがそう言いながら荷物を取り出すとナハマは固まった


「そりゃ驚くわな。ロキもオリビエもスキル持ちだ。ダビアとマロニエはマジックバックだったか?」

「ああ。俺らにインベントリのスキルは無いからな」

「できるものなら欲しいスキルだけど」

2人は迷宮に行く度にそう言っている

その気持ちは何となくわかるけどね

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