28-2

「改めて自己紹介ね。私はオリビエ・グラヨール20歳。この屋敷の持ち主で、このカフェのオーナーでもあります。そこにいるクロキュスもここに住んでます」

「あ、私はカプシーヌ・ガーデニア。26歳でゼリーが得意です。妹のアカシア・ガーデニアは22歳、今日は屋台で大福を売っています」

屋台で声をかけた女性、カプシーヌが真っ先に答えてくれる


「イリス・ヴァレリアン。カプシーヌと同じ26歳でクッキーを売ってます」

「アマリリス・ヴァレリアン。イリスの妹で23。ケーキの中でも生クリーム系です」

「ローズ・トレミエ。20歳でマドレーヌを売っています」

「ラン・ギモーヴ24歳。チョコレートを売ります」

それぞれが自己紹介をしてくれる


「ありがとうございます。見事にバラバラなのはやっぱり相談して?」

「ええ。飽きが来ないようにっていうのも考えながら決めました」

「なるほど。ケーキだけちょっと日持ちが悪い感じかしら…」

「日持ちが良くても次の週に前週の売れ残りを出すわけにはいかないので条件は変わらないんです」

その辺りは随分厳しいようだ

衛生面を考えれば正解かもしれないけど


「かなりきっちりした決まりがあるのね?」

「そうなんです。だからみんな終わりがけはただ同然で配ることも」

「それを狙う人が出てきたら本末転倒ね」

そう言うと5人は俯いた

実際そうなってしまっているのだろう


「とりあえずこちらのシステムを簡単に説明するわね」

コーヒーを一口飲んでから話を切り替える


「持ち込んでもらったスイーツはそのショーケースに並べます。焼き菓子なんかはケースの上になるかな」

「そうですね。冷やすのはちょっと」

ローズは苦笑する


「値段設定は400シア、500シア、600シアから選んでもらって値段ごとに色の違うタグに番号を付けて管理します」

そう言いながら今日の売上分が入ったケースをテーブルに置く


「これが今日売れた分。番号がついているので何がどれだけ売れたかが分かるようになってるの」

「なるほど…」

色と番号で識別できるこのシステムは、ロキが考えてくれたものだ

管理するのも楽でとても助かっている


「売り上げの取り分だけど、人件費相当の30%はカフェに、残りの70%は持ち込んだ方のものでどうかしら」

「そんなにいいんですか?」

「屋台だともっと利益が少ないのに…」

「私としてもメリットがあるので」

にっこり笑って言うとそんなものなのかという顔をしていた


「商品を置く期間や売り上げの回収頻度は皆さんにお任せします。期日の前に状態が悪いと判断したらその時はこちらで避けさせてもらいますけど」

「それは当然ですね。私たちも状態の悪いものまで売りたいとは思いませんから」

アマリリスが言う


「あの、屋台で売れ残ったのを翌朝持ってくるって言うのも有ですか?」

「勿論大丈夫です。あとはチラシにも書いてる通りメニューを作ってないので試作品をいくつか置いて様子を見ることも可能ですよ」

「いくつかって2つや3つでもってことですか?」

「ええ。1つから可能です」

試作品などを考えるとやはり少数からというのは魅力的のようだ


「あとは注文を受け付けるかどうかですけど…」

「この予約すればっていう?」

「そうです。いくつまでなら注文可能、などの条件を付けることもできますよ」

「そんなにわがままでいいんでしょうか?」

心配そうに尋ねたのはカプシーヌだ


「多少のわがままは希少性に繋がりますからね」

「希少性…すごいこと考えるんですね…?」

ランが本当に驚いたような顔をする


「私、お願いしたいです」

「私も」

カプシーヌとイリスが言うと他の3人も頷いた

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