22.果実を求めて
22-1
カフェの準備が進む中、私とロキは2つ目となる初級迷宮に来ていた
きっかけは昨夜のダビアの言葉だった
*****
「そうだオリビエ、コレって使い道あるか?」
ダビアがそう言いながら取り出したのは丸い物体だ
「何だこれ?」
「俺にもさっぱりだ」
首を傾げるロキにダビアがどや顔で返す
分からないのに威張るのもどうかと思うけど…
「東にある初級迷宮の戦利品なんだけどな」
「何だ、また迷宮に行ってたのか?」
「ああ。ギルドで知り合ったやつと即席パーティー組んでな」
ダビアはよく色んなパーティーに混ぜてもらって迷宮に潜っているらしい
それは騎士団にいた頃から変わらず続けていることだという
「これ…」
受け取った物体は私にとっては見慣れた果物だった
「知ってんのか?」
「ロキたちは知らないの?」
逆にそっちの方が不思議だった
「少なくとも見たことは無いな」
「俺も。一緒に行った奴らも知らないらしい。いつもギルドで売るけど用途が分かんねぇから大した金にはならないらしい。それはまぁ、初級迷宮のしかも浅層で出てるから納得なんだけどな」
「用途が分かんねぇって鑑定はどうした?」
「迷宮品に関しては用途が判明した物しか鑑定内容が表示されないんだと。俺も今日初めて知った」
「へぇ…」
ある意味驚きだ
でも私の鑑定にはちゃんと表示されてるんだけどね
「たしかにこっちの店では見たことないのよね…」
私はそう言いながらまな板と包丁を用意する
「ちょっと待て。それが出て来るってことは食い物なのか?」
ダビアが思わず立ち上がっている
それ、とは勿論まな板と包丁の事だ
「少なくとも見た目は元の世界の果物なんだよね。私の鑑定でもその名前が出てるし…味は実際に食べてみないと何とも言えないけど…」
これまでにいくつか、元の世界と見た目も名前も同じなのに、味は全くの別物と言う食材があったのだ
あれは違和感しかなかった
「そういやお前の鑑定は特殊なんだっけ」
食いつくのはそこなのねと苦笑しながら頷いて返す
「クロキュス、問題はそこじゃない。オリビエ、その見るからに怪しいのが本当に食えるモノなのか?」
「怪しい…?」
改めて果実を見る
黒と緑の縞模様---すいか---確かに怪しいのかしら?
私には見慣れたもので怪しさのかけらもないけど…これ切ったら赤か黄色よね?
それとも全く違う色になるのかしら?
そこまで考えて、それを見た2人の反応が楽しみになった
「ま、とりあえず切ってみましょう」
私は勢いよく包丁を入れた
「…は?」
断面を見た2人は呆然としている
外からは想像できない色
予想通りの反応にちょっと嬉しくなったのは内緒
「種なしなのね。有り難いわー」
サクサクと一口サイズに切っていく
「ん。いい甘み。味も想像通りだけど、こっちの方が美味しいかも」
甘みが凝縮されていて糖度が高いのが分かる
30センチ程が一般的なサイズだったけど目の前にあるのは10センチほど
リンゴサイズでこの濃さはスイーツには丁度いいかもしれない
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